5月27日、韓国の大統領選挙に出馬した候補らによる最後のテレビ討論会が開かれた。
【写真】ソウル汝矣島で行われた大統領選候補の李在明氏を支援する選挙活動。後列左から、民主党の金民錫(キム·ミンソク)常任共同選挙対策委員長と保坂裕二教授
この日の討論会のテーマは、政治/外交安保分野だったのだが、実際には相手への誹謗と下品な暴言であふれ、政策討論とは名ばかりの、醜悪な討論会となった。
■ 「韓米日協力は必要、でも中国、ロシアもないがしろにはできない」
長期的な経済低迷と社会的分裂が深刻な韓国では、今回の大統領選では「外交安保政策」は主要イシューに含まれていないという指摘もある。そのためか、当選が有力視される共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補は今回の討論会でも自身の外交安保観に対して具体的な認識を示さなかった。
27日の討論会のうち、外交安保分野に対する李在明候補の冒頭発言は次の通りだ。
「今、国際社会の不安定性がかなり高まっています。アメリカの保護主義・自国優先主義、ロシアの軍事力強化、中国の軍事力強化、ロシアと北韓との接近、日本との関係など非常に複雑です。私は大韓民国の外交の根幹は韓米同盟だと思います。韓米同盟を実質的かつ包括的に漸進的に未来志向的に発展させることは正しい方向です。その基礎の上に韓米日協力も必要です。韓米日協力の内容は当然、安全保障、技術、文化、環境などいろいろあるでしょう。
だからと言って中国とロシアの関係をないがしろにしてはいけません。(韓国外交にとって)重要な部分であるため、適正に管理する必要があります。不必要に敵対化する必要はないということを申し上げます。平和と安定が重要です。大韓民国の軍事力水準は世界第5位、大韓民国の国防費は北朝鮮のGDPの2倍に達します。強力な軍事力の上に(北朝鮮との)対話と協力、平和が必要です」
■ 北朝鮮送金疑惑
続く討論では、李在明候補の「対北朝鮮送金疑惑」問題が浮上した。
李在明:北極航路が改善される場合、釜山が海運航路になるため、海洋水産部を釜山に移し、釜山を海運港湾の中心都市にしなければならない。(韓国最大の民間海運会社である)HMMも釜山へ移転させます。
李俊錫(改革新党候補):HMMの前身は現代商船です。00年代初めに対北朝鮮事業をしていたが、2億ドル程度の資金が不法に北朝鮮に送られ、企業が危機に直面したことがあります。今なら世界的な大問題になっていたでしょう。
サンバンウル・グループの対北朝鮮送金では李在明候補が非常に困っていますね。法的判断とは関係なく、米国の制裁対象になるということをご存じだと思います。(李候補が)大統領になっても米国への入国が制限される可能性があります。もし李在明候補が当選すれば、米トランプ大統領がこのような弱点をそのまま見逃しておくのでしょうか。
金文洙(国民の力候補):国連の対北朝鮮制裁も顔負けするほどの不法対北朝鮮送金犯罪が起きました。5月9日、米ワシントンの在米韓国人会のジェームズ牧師が100億ウォンの対北朝鮮送金疑惑に対して、李在明候補を米財務省、国務省、国連安全保障理事会に公式告発しました。巨額の対北朝鮮送金は、北朝鮮の金正恩一家を豊かにし、核とミサイルになって(韓国へ)戻ってくるでしょう。
李在明:私が対北朝鮮送金に関与したという話には何の根拠もありません。実際に彼らが私のために送金したということ自体、とても信じられない話で、実は(会社代表の)賭博資金に使ったという説もあります。
*****
「サンバンウル・グループの対北朝鮮送金」事件を簡単に説明すると、2018年に民間企業であるサンバンウル・グループのキム・ソンテ会長が、中国で北朝鮮のキム・ヨンチョル=アジア太平洋平和委員会委員長に会い、巨額の現金を渡した事件だ。