「自民党の利権を守るために、消費者が不当に高いコメを買わされてきた」 とある官僚が考えた「令和のコメ騒動」の解決方法とは?(古市憲寿)


 何でこんな社会主義みたいな政策がまかり通ってきたのか。自民党にとって農村票が重要だったからだ。もし自由競争に任せて価格が崩壊すれば、農家は政治に怒るだろう。だから補助金で農業を保護しようとした。つまり自民党の利権を守るために、消費者が不当に高いコメを買わされてきた、ということだ。

 本来、コメの値段を下げるなんて簡単である。関税を取っ払い、自由市場でコメを流通させるのだ。海外産のコメのレベルも上がっている。リーズナブルにおいしいお米を食べたい人は海外産を選び、それでも国産にこだわりたい人は日本米を食べればいい。実際、自動車はずっと昔に関税が撤廃されている。競争が製品やサービスの質を上げるのは資本主義社会の常識。

 ちなみに即席で令和のコメ騒動を解消する方法がある。理屈としては、コメ価格の上昇を期待して在庫を放出しない業者を何とかすればいい。ある官僚のアイデアだが、政府は「価格が例年並みに下がるまで無制限でカリフォルニア米を輸入します」と発表する。値崩れを恐れた業者が在庫を放出すれば自然と値段は落ち着くはずだ。

 実はこれ、悪名高いアベノマスクと同じ手法である。当時のマスク不足は業者がマスクを抱え過ぎていたことが主因。政府が全住民にマスクを配ると宣言したことで、焦った業者が在庫を放出し、マスクの流通量が増え始めた。今でもあのデザインは微妙だったと思うが、統制経済ではなく自由経済の原理で、マスク問題を解決しようとした手法は評価されていい。うそみたいな話だが、令和のコメ騒動にこそアベノマスクの精神が求められている。

「週刊新潮」2025年6月5日号 掲載

新潮社



Source link