米国の著名な政治家ドナルド・トランプ前大統領と、実業家のイーロン・マスク氏の間で、かつての盟友関係から一転、激しい対立が深まっています。この対立は、特にトランプ氏が推進する税制・歳出法案を巡る意見の相違から生じており、両者が公然と互いを非難し合う状況に至っています。日本からも注目される世界政治・社会の動きとして、その詳細と背景は重要なニュースとなっています。
関係悪化の背景
トランプ氏とイーロン・マスク氏は、以前は良好な関係を築いていました。マスク氏はトランプ政権下で政府職員の大量解雇などを主導する役割を担っており、5月末に政権から離脱した際も、トランプ氏との円満な関係をアピールしていました。しかし、近年になって財政赤字の大幅な拡大につながると指摘される税制・歳出法案を巡り、ここ数日で両者の間の亀裂があらわになりました。
かつての盟友関係を示すトランプ氏とイーロン・マスク氏がテスラ車に同乗する姿
税制・歳出法案を巡る対立
両者の対立が顕在化したのは、税制・歳出法案に対するマスク氏の批判がきっかけです。トランプ氏はドイツのショルツ首相との会談で記者団に対し、法案に反対するマスク氏に「失望した」と述べました。彼は、マスク氏が法案をよく知っているにも関わらず、自身が経営するEV大手テスラへの電気自動車購入助成が打ち切られると知って急に反対に回ったのは「アンフェアだ」と主張し、マスク氏の反対は個人的な利益のためだとの見方を示しました。
これに対し、マスク氏は自身が所有するソーシャルメディアX(旧ツイッター)で即座に反論。「うそだ。私は一度も法案を見せられていない」と述べ、法案に反対するのはそれが「米国の破産」につながるためだと指摘しました。
法案の内容と財政への影響
トランプ氏が「1つの大きく美しい法案」と呼んで成立を訴えるこの法案は、減税や福祉などへの支出削減、債務上限引き上げなどをまとめたものです。5月下旬に下院を通過し、現在は上院で審議が進められています。議会予算局(CBO)は、この法案が成立した場合、連邦債務が今後10年で3兆8千億ドル(約547兆円)増加すると試算しており、財政赤字拡大への懸念が高まっています。
公開の場での非難合戦と応酬
対立はさらにエスカレートしました。トランプ氏は自身の交流サイトに「(マスク氏は)クレイジーだ」と投稿。さらに「予算節約の最も簡単な方法は、イーロン(の企業)への政府補助金と契約を切ることだ」と述べ、マスク氏の事業への影響を示唆するような脅迫を行いました。
これに対し、マスク氏はX上で「やってみろ」と応戦。「私と政府の契約を打ち切るとの大統領声明を考慮し、(自身の宇宙開発企業)スペースXはただちに宇宙船ドラゴンの運行停止を始める」とツイートしました。
税制法案について語るトランプ前米大統領
スペースXが開発したドラゴン宇宙船は、米航空宇宙局(NASA)と共同で国際宇宙ステーション(ISS)への貨物や人員輸送を担っています。もしドラゴンの運行が実際に停止すれば、米国の宇宙事業に大打撃を与える可能性があり、マスク氏が政府との契約をテコに応酬した形です。
結論
トランプ氏とイーロン・マスク氏の間のこの公然たる対立は、かつての協力関係からの劇的な変化を示しています。税制・歳出法案を巡る意見の相違は、両者の個人的な非難や互いの事業への影響を示唆する発言にまで発展しており、世界が注目する中、今後の展開が注目されます。特に日本のメディアでも大きく報じられる可能性が高く、両者の動向は引き続き注視が必要です。