「朝、目が覚めたとき、もしその日一番やりたいことがサッカーじゃなかったら、私はその日に引退する」
現役時代、彼女はそう断言していた。「彼女」とは、元なでしこジャパンの司令塔・宮間あやさん(40)だ。
■人々に勇気を与えたW杯初優勝
いまから14年前、初優勝を飾った女子ワールドカップ決勝のアメリカ戦で、反撃の1点目を挙げ、正確なコーナーキックで澤穂希の劇的同点ゴールをアシストしたのが宮間だ。PK戦の末に勝利をつかんだなでしこジャパンの姿は、この年の3月に起こった東日本大震災から立ち上がろうと戦う人々に勇気を与え、空前の女子サッカーブームが巻き起こった。
翌2012年のロンドン五輪では、女子サッカー史上初の銀メダルを獲得。2015年のカナダワールドカップでは、宮間はレジェンド・澤の後を継いでキャプテンを務め、チームを準優勝に導いた。
しかし、なでしこブームは長くは続かなかった。
【写真で見る】「朝、目が覚めたとき、もしその日一番やりたいことがサッカーじゃなかったら、私はその日に引退する」と話した宮間あやさん(6枚)
精神的支柱だった澤が引退した翌2016年2〜3月に行われたリオデジャネイロ五輪最終予選で敗退。オリンピックへの道が断たれると、宮間はその責任を一身に背負った。さらに所属チームの岡山湯郷Belleでは監督と選手の不協和音が取り沙汰され、同年11月に電撃退団。以降、ピッチに戻ることはなかった。
引退会見や引退試合も行われず、サッカー関係者でも彼女の近況を知らない。当時はまだ31歳で年齢的な衰えもない、ワールドカップ4大会、オリンピック2大会を含む日本代表戦162試合に出場、史上最多3度のアジア最優秀選手を受賞した司令塔の突然の“退場”だった――。
それからの宮間は、時折サッカー教室やイベントに参加することはあるものの、解説者として活躍する澤やタレントとして人気を博する丸山桂里奈とは対照的に表舞台から姿を消した。