日本の対内直接投資、GDP比で世界最低水準 北朝鮮より低い現実が示す課題

「日本は北朝鮮のすぐ下の196位」――これは、2023年時点におけるGDPに占める対内直接投資(FDI)の割合に関する驚きの順位です。つまり、対GDP比で見たとき、海外企業が日本国内で事業を展開したり、日本の既存企業への出資(一般的に10%以上)を行う割合が、北朝鮮よりも低かったという厳しい現実を示しています(国連貿易開発会議UNCTAD調べ)。

実は、この順位は数年前から変わっていません。2023年時点の累積FDIは対GDP比でわずか5.89%にすぎないのです。なぜ、経済大国であるはずの日本が、これほどまでに海外からの投資を呼び込めていないのでしょうか。

対内直接投資は、受け入れ国の経済に様々な恩恵をもたらすことが研究で示されています。特に、数十年前に19のOECD諸国を対象に行われた研究では、FDIが多い国ほど生産性の向上が促されることが確認されています。その主な理由の一つとして、「外国企業が持つ知識や技術が、国内企業にとってしばしば新しい刺激となり、イノベーションや効率化を促進するから」と指摘されています。これは、単なる資金流入に留まらず、質の高い雇用創出や産業構造の高度化にも貢献する重要な要素です。

日本の対内直接投資事例、TSMCと日本企業の合弁JASMの工場外観日本の対内直接投資事例、TSMCと日本企業の合弁JASMの工場外観

このようなFDIの重要性を踏まえ、日本政府も目標を掲げています。2021年には、2030年までに累積FDIを80兆円に達すると予測しましたが、2023年にはこの目標を100兆円に引き上げました。さらに、石破政権は120兆円という、より高い目標を検討していると報じられています。

仮に2030年に120兆円を達成できたとすると、IMFが予測する同年の名目GDPに基づけば、これはGDPの約17%に相当します。しかし、もしこの17%という水準に2023年時点で達していたとしても、日本は199カ国中ようやく175位になる程度であり、世界の主要国と比較すると依然として低い水準に留まります。ちなみに、UNCTADのデータでトップ10にランクインしている国や地域は、日本とは大きく異なるFDI比率を誇っています。

さらに、日本の対内FDIに関する議論を複雑にしているのが、会計基準の問題です。財務省(MOF)は、IMFやOECDが定めた国際的な会計ルールを無視する形で日本の数値を計上しているという指摘があります。その結果、財務省は2024年に日本の対内FDIの累積ストックが53兆円に達したと主張していますが、IMFやOECDのルールに基づくと、UNCTADのウェブサイトで示されているように、実際のストックは36兆円、つまりGDPの5.9%にすぎないのです。この数値の乖離は、日本の対内FDIの現状を正確に把握する上での大きな課題となっています。

結論として、日本の対内直接投資がGDP比で世界最低水準に低迷している現実は、日本経済が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。FDIは生産性向上や経済活性化に不可欠であり、政府目標の達成に向けた取り組みは重要です。しかし、国際基準と乖離した会計処理や、目標水準が国際的に見て低いまま推移している現状を真摯に受け止め、海外からの投資を呼び込むための抜本的な環境整備が喫緊の課題と言えるでしょう。

参照元:

  • 国連貿易開発会議(UNCTAD)
  • 国際通貨基金(IMF)
  • 経済協力開発機構(OECD)
  • 東洋経済オンライン / Yahoo!ニュース 掲載記事