近年、宿泊費の高騰や旅の自由を求める動きから、「車中泊」への注目が高まっています。しかし、その場所やマナーを巡る課題も浮上していました。こうした中、大手コンビニエンスストアのローソンが、店舗の駐車場を「車中泊」に開放する画期的な実証実験を開始。これは、ホテルや旅館の予約が取りにくい繁忙期においても、車での自由な旅を望む人々にとって朗報となるだけでなく、新しい旅のスタイルを提案するものです。
ローソンが仕掛ける「コンビニ車中泊」の全貌
コンビニ大手のローソンは、自社の店舗駐車場を車中泊スペースとして提供する実証実験を、まず千葉県内の6店舗で2024年7月から開始しました。この取り組みの最大の売りは、車中泊利用者がいつでも飲食物を購入できる「利便性」と、店内に従業員がいることによる「安心感」です。ローソン側にとっても、駐車場の有効活用というメリットがあります。
ローソンは発表資料の中で、「全国の店舗網を活用することで車中泊場所の選択肢を増やし、快適な“くるま旅”のお手伝いにも繋げていきたい」と述べており、この実証実験を通じて、新たな旅のインフラを構築していく意欲が見て取れます。
日本における車中泊環境の魅力とマナーの重要性
キャンピングカーや車中泊スポットのシェアリングサービスを手掛けるCarstay(神奈川県横浜市)の広報担当である中川生馬氏は、日本の車中泊環境について「非常に整っている」と評価します。その理由として、各地に点在する温泉や銭湯の存在、公共トイレの清潔さ、そして全体的な治安の良さを挙げています。
中川氏自身も10年以上の車中泊経験を持つベテランですが、これまで一度もトラブルに遭遇したことがないとのこと。同氏は、車中泊を安全かつ快適に楽しむための秘訣として、「節度を保ち、マナーを守ること」の重要性を強調しています。ゴミの処理、静寂の維持、プライバシーへの配慮など、利用者が互いに尊重し合う姿勢が、トラブル回避に繋がると言えるでしょう。
千葉県にある施設でバーベキューを楽しむ車中泊の様子。キャンピングカーでの自由な旅の一場面。
誤解されがちな車中泊場所:道の駅・サービスエリアの役割
車中泊ができる場所として、多くの人が「道の駅」や「高速道路のサービスエリア」を思い浮かべがちです。しかし、中川氏はこれらを「運転に疲れた方などの一時的な休憩の施設であり、車中泊を目的とした場所ではない」と明確に否定しています。
実際、これら一時的な休憩施設の駐車場では、長期滞在によるゴミの放置、テーブルを出しての調理、洗面所での洗髪や残飯を流すといったマナー違反が問題視されています。これらの行為は、他の利用者への迷惑となるだけでなく、施設の管理側にも大きな負担をかけ、ひいては車中泊文化全体のイメージを損なうことになりかねません。
安心して利用できる公認の車中泊スポット
では、安心して車中泊を楽しむためには、どのような場所を選べば良いのでしょうか。車中泊を目的とした施設としては、主に以下の3つが挙げられます。
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RVパーク
日本RV協会が認定する車中泊スペースで、以下の条件を満たしています。- ゆとりある駐車スペース
- 24時間利用可能なトイレ
- 電源設備が使用可能
- 近隣に入浴施設がある
- ゴミ処理が可能
- 複数日の滞在が可能
協会サイトには全国に500以上の認定施設が掲載されており、それぞれの利用料金も明記されています。計画的な「くるま旅」には最適です。
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オートキャンプ場
車中泊のほか、テントを張ることも可能なキャンプ場です。トイレ、シャワー、調理施設、電源などが備わっていることが多く、より本格的なアウトドア体験を楽しめます。日本オートキャンプ協会のサイトでは、全国の施設が紹介されており、「ペットOK」などの条件で検索することも可能です。家族連れやペット同伴の旅行者に人気の選択肢です。 -
Carstayなどの事業者が提供する車中泊スポット
Carstayのようなプラットフォームは、個人や法人が所有する空きスペースを車中泊場所として提供するシェアリングサービスを展開しています。これにより、個性豊かな場所での滞在が可能となり、地域の魅力をより深く体験できる機会も生まれています。
まとめ
ローソンの「コンビニ車中泊」実証実験は、車中泊の可能性を広げる画期的な一歩です。これにより、旅行者は費用を抑えつつ、より柔軟で自由な「くるま旅」を計画できるようになります。同時に、日本が持つ豊かな車中泊環境の魅力を再認識させ、マナーを守ることの重要性を改めて問いかける機会にもなっています。今後、RVパークやオートキャンプ場、Carstayなどの既存の施設と連携し、より安全で快適な車中泊文化が日本に根付いていくことが期待されます。