日本全国でクマによる被害が急増しており、特に秋田県では記録的な人身被害と莫大な経済損失が報告されています。環境省の発表によると、今年4月から10月末までのクマによる人身被害件数は176件、被害者数は196人に上り、2006年度以降で最悪の数字を記録しました。この深刻な状況は、人間の生活圏とクマの生息域との境界線があいまいになっている現状を浮き彫りにしています。
止まらないクマの人里出没と農業被害
例年にも増して、クマの人里出没が頻発しています。特に深刻なのが、秋田県北部・鹿角市での農業被害です。11月上旬には、果樹園でリンゴがクマによって食い荒らされる被害が相次ぎました。地元リンゴ農家の男性は、「食べかけのリンゴが地面に散乱し、クマの糞がいくつも落ちていた。知り合いの農家は3000個ものリンゴをクマに食べられたと話していた」と語り、被害の甚大さを訴えています。
この鹿角市では、相次ぐクマの出没に対応するため、全国で初めて陸上自衛隊が派遣される事態となりました。自衛隊は今月末まで活動を予定しており、銃器による駆除ではなく、箱わなの設置や運搬などを担当し、被害拡大の阻止に協力しています。
ブランド鶏「比内地鶏」も被害、住民の不安高まる
農業被害にとどまらず、家畜への被害も発生しています。10月29日には、日本三大地鶏の一つとして知られるブランド鶏「比内地鶏」を含む38羽が、鹿角市内でクマによって捕食される事例も報告されました。これにより、地域の経済的損失は一層拡大しています。
鹿角市の市民の間では、不安が隠せない状況が続いています。市内に住む高齢男性は、最近発生した80代男性への襲撃事件について語りました。「森から出てきたクマと偶然遭遇し、顔と右足を襲われたそうです。命に別状はなかったものの、かなり深い傷を負ったと聞きました。クマはまず顔を狙ってくることが多く、運が悪ければ顔の肉ごとえぐり取られるほどの力があります。テレビなどで紹介されているような『前かがみになり首の後ろに手を回す防御姿勢』も、高齢者にとっては実践する前に襲われてしまうかもしれません」と、その恐怖を露わにしました。
現在、鹿角市内ではクマの出没が多発しており、小中学校では児童生徒の登下校に保護者の送迎が必須となるなど、厳重な警戒が続いています。
市街地への侵入と駆除
鹿角市と同じく県北部に位置する能代市では、11月16日にイオン能代店に1頭のクマが侵入するという事件が発生しました。幸いにも人的被害はなかったものの、イオン周辺は飲食店や住宅が密集する市の中心部であり、市民に大きな衝撃を与えました。通報から約3時間後、このクマは駆除されました。
この一連の事件は、クマの活動域が人里にまで拡大している現状と、それに対する効果的な対策の喫緊の必要性を示しています。地域社会全体でクマへの警戒を強化し、共存のための新たなアプローチを模索することが求められています。
クマ対策のため、秋田では自衛隊が出動するほど深刻な事態に……
参考資料
- Yahoo!ニュース: 「38羽の地鶏がクマに食べられた」 https://news.yahoo.co.jp/articles/7aa7a8081d1765f9efc5e821b4d86e26bc311474





