昭和歌謡界の「元祖御三家」として一時代を築いた歌手の橋幸夫氏(82)が、アルツハイマー型認知症であることを公表しました。この公表を受け、常に彼のコンサートに同行してきた“弟子”たちが、生前の彼に見られた唯一の「病の兆候」について明かしています。関係者の証言から、病気の進行と周囲の受け止め方を探ります。
アルツハイマーを公表した歌手・橋幸夫氏
身近な弟子たちの戸惑い
橋幸夫氏の二代目として彼の楽曲を受け継ぐ3人組グループ「二代目橋幸夫yH2」のメンバーである徳岡純平氏(24)は、橋氏が認知症であることを知ったのは今年の春ごろだったと語ります。「ショックでしたが、正直なところ実感が湧きませんでした。普段一緒に過ごしていて、心配になるような点は全くなかったからです。年相応の物忘れ程度にしか感じていませんでした」。
同じくyH2のメンバー、進公平氏(29)も、昨年の3月から橋氏のコンサートに同行する中で、橋氏が冗談やダジャレを頻繁に口にする人物だったため、同じ話を繰り返す場面があっても、それは橋氏流のユーモアだと解釈していたと明かしました。
公表直前に見られた「異変」
橋氏の所属事務所である夢グループが、「昨年12月に中等度のアルツハイマー型認知症と診断された」と公表したのは5月20日のことでした。
実はその公表のわずか5日前、大阪で行われたコンサートの舞台上で、yH2のメンバーたちはある決定的な「異変」を目撃していました。それは、橋氏がおなじみのヒット曲『霧氷』を歌唱中に、突然歌詞が出てこなくなった瞬間です。
異変への対応と周囲のサポート
夢グループの石田重廣社長は、歌詞に詰まった橋氏を見て、yH2のメンバーに急いでステージに出るよう指示しました。メンバーがステージに上がると、橋氏は冗談めかして「君たちは歌わなくていいんだよ」と声をかけました。この茶目っ気のある言い方に、観客は異変に気づくどころか、笑い声さえ漏らしたといいます。
徳岡氏は、この時橋氏が「自分が歌詞を忘れたことをすぐに失念しているのでは?」という不安がよぎったと述懐しています。しかし、関係者たちの間によぎったこの不安は、いつも傍らで橋氏を支えている18歳年下の妻の存在によってすぐに和らいだと言います。
夢グループ社長石田氏と共に大相撲を観戦する橋幸夫氏
今回の公表と、それに伴う身近な人々の証言は、アルツハイマー病の初期兆候がいかに見過ごされやすいか、そして周囲の理解とサポートが本人にとってどれほど重要であるかを改めて示唆しています。
出典: Yahoo!ニュース / デイリー新潮