6月9日、ご結婚から32回目の結婚記念日を迎えた天皇、皇后両陛下。おふたりの出会いからご結婚の直前まで、美容師という立場で雅子さまを支えたのが、多田修さんだ。日本中の人びとが、婚約会見の中継を幸せな思いで見ていたとき、担当の多田さんは「祈るような気持ちとハラハラしながら」画面を見つめていた。実は、雅子さまの帽子のなかには、ある秘密があった。
【貴重】ふわふわの白いポンポンが可愛い!ヘッドドレス姿の婚約時代の雅子さま
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「雅子さん。皇太子さまからお電話です」
婚約内定の報道が出てからは、多田さんは何度も小田和邸に通ってカットや打ち合わせを行った。
居間にある姿見の鏡と椅子、シートを敷いてカットとしていると小和田家のお手伝いさんから声がかかることもあった。
「はい」
雅子さまはカットの途中でも、スッと席を立って電話を受け取る。そんなほほ笑ましい光景も見られたという。
実はこの時期、多田さんはカットといいながら、ほとんど髪を切っていない。
というのも、雅子さまは、結婚の儀で十二単の装束とともに側頭部を大きく膨らませる「おすべらかし」を結うために髪を伸ばしていたという。
「ただ、雅子さまは、枝毛をつくらないよう気を配られていました。なので、小和田邸でカットするときも毛先1ミリ、2ミリを、『粉カット』して整えていました」
皇室会議で皇太子さまと小和田雅子さんの婚約が決定した1月19日、続いておふたりは婚約会見に臨んだ。
薔薇の飾りがついた淡いレモン色のワンピースと帽子、そして真珠のアクセサリーと、品のよい装いに身を包んだ雅子さまは、すっと顔を上げ、凜とした声でこう話した。
「お受けいたしますからには、殿下にお幸せになっていただけるように、そして、私自身も自分で『いい人生だった』と振り返れるような人生にできるように努力したいと思います」
結婚を決意した心境について語る雅子さまの言葉は、外務省の第一線で働く女性としての芯の強さを感じさせるものだった。