AI(人工知能)の防災への活用が広がっている。インターネット上にあふれる会員制交流サイト(SNS)への投稿を解析して情報提供したり、被災者の要望に自動対話システムで対応したりすることに取り組む自治体も増えている。多くの人がスマートフォンを持ち、ITインフラが整い、AI技術が進化する時代に、防災のあり方が大きく変化しそうだ。(吉国在)
神戸市は試験導入
「第1報、バスターミナルの案内看板落ちる。三宮駅付近」
死者90人以上を出した台風19号が近畿へ接近した10月12日午後1時。神戸市役所(神戸市中央区)内に設置された災害対策本部に最新の配信を知らせるAIアナウンサーの透明感ある声が響いた。室内に設置された巨大モニターは、天井から案内板が落下する画像を大きく映し出す。
<目の前で落ちた…ビビる><三宮の看板落ちかけてた>
居合わせた人たちが投稿したツイッターやフェイスブックの画像やコメントも続々とモニターに映し出され、集まった市の幹部の間には緊張感が走った。
情報を配信したのは、AI情報解析を手掛ける「スペクティ」(東京都)。神戸市は今年4月から同社の災害発生情報の配信サービスを試験導入している。台風19号の接近時に運用したところ、三宮駅で看板が落下した情報を発生直後にキャッチ。関係先へ連絡し、人的被害がないことなどを迅速に確認できた。
自らも平成7年阪神大震災を市職員として経験した神戸市危機管理室の小塚満幹(みつとし)課長は「大規模災害時に職員が窓口で対応するのは限界がある」と話す。「同時に膨大な量の情報をカバーできるAIの力はこれからの防災に欠かせないものになる」と期待する。