「PTAには入会しません。個人情報も渡さないでください」──。長野県に住む50代の女性Aさんは、子どもが進学した県立高校に対し、PTAへの非加入と個人情報の不提供を明確に伝えていた。しかし、PTAが発行する会報誌に、Aさんの子どもが写る集合写真が顔とクラス名が分かる形で無断で掲載されているのを発見。学校側の個人情報の取り扱いに強い憤りを感じたAさんは、校長を地方公務員法違反の疑いで刑事告発するという手段に出たが、結果は不起訴となった。この一件は、保護者と学校・PTA間の個人情報管理、特にPTA非会員の情報を巡る深刻な問題提起となっている。
非加入の意思、なぜ無視されたのか？
Aさんと学校側の摩擦は、子どもが高校2年生に進級した2023年春ごろに始まった。入学時にはPTAの入会申込書はなく、学校徴収金の引き落とし案内にPTA会費が記載されているのを見て、自動的に会員扱いされることを危惧したAさんは行動を起こした。
学校に電話で連絡し、「入会しないので会費を引き落とさないでほしい」「PTAに個人情報を提供しないでほしい」と明確に伝え、学校側もこれを了承したという。さらに、提出した「個人情報提供同意書」には、「PTAへの個人情報開示を除く旨」と「PTAに個人情報を提供しないでください」と重ねて明記した。
これらの明確な意思表示にもかかわらず、2023年5月ごろに発行されたPTAの会報誌に、Aさんの子どもが写った集合写真が顔とクラス名が分かる状態で無断掲載されているのを発見した。Aさんは「口頭でも書面でも明確に伝えたのに、まったく守られていない。杜撰であることが腹立たしい。不愉快で、学校への不信感でいっぱいになりました」と当時の心境を語っている。学校側の個人情報管理の甘さが露呈した形だ。
長野県の高校でPTA会報に無断掲載された写真問題を報じるニュース記事のイメージ
学校側は「会報誌は回収しません」
Aさんは学校に対し、会報誌の回収と経緯の説明を求めたが、学校側から返ってきたのは「法律の専門家に確認し、PTA会報誌は回収しません」という一方的な回答だった。この対応は、Aさんの学校への不信感をさらに深めるものとなった。
Aさんがここまで個人情報の取り扱いに敏感なのは、過去の経験が影響している。子どもが小学生だった頃、PTAに入会した後に退会したが、卒業時にPTA役員から「卒業証書用のフォルダを非会員が無料でもらうのは『ずるい』という声が上がっているので支払ってほしい」と言われた経験があった。Aさんはこの出来事を通じて、「非会員であることを把握されていなければ、そんな請求はなかったはず。個人情報をPTAに渡してはいけないと痛感しました」と述べており、今回の高校での一件はその懸念が現実のものとなった出来事だった。
Aさんは、PTA活動について「生徒のために活動できる人たちのみで、学校や非会員の負担にならない範囲で活動すべきです」との持論を展開しており、今回の問題を機に、PTAの入会任意性とその運営のあり方、そして学校における個人情報管理の重要性が改めて問われている。
Source:
https://news.yahoo.co.jp/articles/b0f17d26ad626027d032891549cf21f5d46af695
