豊田章男氏、日本自動車会議所会長就任へ:祖父・父から三代続く「自動車業界の要」

日本自動車会議所は、6月10日の定時総会で、トヨタ自動車の豊田章男会長が新会長に就任する見通しです。これは、内山田竹志会長からの8年ぶりの交代となり、日本の自動車業界全体に大きな注目を集めています。特に、豊田章男氏にとっては、祖父・豊田喜一郎氏が創設に関わった組織のトップに立つことになり、単なる要職以上の特別な意味合いを持ちます。

日本自動車会議所の次期会長就任が期待される豊田章男トヨタ自動車会長の写真日本自動車会議所の次期会長就任が期待される豊田章男トヨタ自動車会長の写真

日本自動車会議所会長の役割と重要性

日本自動車会議所は、日本の自動車産業に関わる166の団体・企業を網羅する横断的な総合団体です。生産、販売、整備、運輸、交通など幅広い分野を代表し、業界全体の要望をまとめ、政策提言を通じて政府との連携を担います。長年の懸案事項は、複雑で負担が大きい自動車関連税制の改革であり、これは会議所の主要なテーマの一つです。会長の持つ影響力は大きく、業界は豊田章男氏の発言力と行動力に大きな期待を寄せています。

豊田家と自動車会議所の深い関わり

自動車会議所の設立は1946年(昭和21年)6月です。その前身である1945年11月発足の「自動車協議会」発起人の一人として奔走したのが、トヨタ創業者である豊田喜一郎氏でした。喜一郎氏は自動車会議所の初代会長も務めています。戦後間もない時期から日本の自動車産業への情熱を燃やした喜一郎氏が尽力したこの組織は、孫である豊田章男会長にとっても特別な意味を持ちます。かつて、筆者は章男氏の父である故・豊田章一郎氏から、子供の頃に喜一郎氏と訪れた自動車会議所がサロン的で良かった思い出を語り、「そんな自動車会館を作りたい」と願いました。章一郎氏が会長時代の2004年、念願の自動車会館が東京・芝大門に開設されています。

豊田章男氏:三代目リーダーへ

今回の豊田章男氏の会長就任により、豊田家からは喜一郎氏、章一郎氏、そして章男氏と、三代にわたって日本自動車会議所のリーダーを務めることになります。これは、日本の産業界において極めて稀なケースと言えます。

就任の背景と要因

自動車業界全体が豊田章男氏の強力なリーダーシップに期待を寄せていることに加え、章男氏にとっても自動車会議所の会長職がある種「悲願」ともいえるポジションであったことが、今回の就任を後押ししたとみられています。また、トヨタ社内および関連団体での人事異動も布石となりました。現会長の内山田竹志トヨタ・エグゼクティブフェロー(相談役就任予定)が6月12日のトヨタ株主総会で退任するほか、昨年6月にはトヨタ渉外広報本部の島﨑豊氏が自動車会議所の専務理事に就任するなど、社内外での連携強化が進んでいました。さらに、経団連副会長などを務めた早川茂トヨタ副会長(12日株主総会で退任予定)が5月に退任し、佐藤恒治トヨタ社長が後任の副会長に就任した経緯も、経団連との関係が深い豊田章男氏の自動車会議所会長就任への流れを後押ししました。

まとめ

豊田章男氏の日本自動車会議所会長就任は、単に一組織のトップ交代というだけでなく、豊田家の歴史と自動車産業の将来が交差する重要な局面と言えます。長年の課題である自動車税制改革をはじめ、激動のモビリティ社会において、三代目のリーダーがどのような手腕を発揮するのか、自動車業界内外からの注目が集まります。