アメリカの大学、特にハーバード大学では、現トランプ政権による留学生受け入れ資格停止や研究助成金凍結といった措置がアカデミアの構造を揺るがしています。日本人研究者であるハーバード大学医学部の内田舞准教授が、多くの関係者が不安と恐怖を感じているこの「トランプショック」の現実について語りました。
ハーバード大学の卒業式で留学生への支援を示すメッセージ入りの帽子をかぶる学生たち
ハーバード大学で感じた二度の「心が折れそうに」なる出来事
内田准教授は、第二次トランプ政権の発足以降、これまでに「心が折れそうになった」出来事が二つあったと述べています。
留学生・外国人学生の拘束事案
一つ目は、今年3月から4月にかけて、米国内の有名大学に通う外国人学生が入管当局に拘束される事案が多発したことです。トランプ政権は不法移民の取り締まり強化を主張していますが、現地報道によると、在留資格やグリーンカードを持つ学生が拘束されるケースもありました。特に、マサチューセッツ州にあるタフツ大学のトルコ人女性学生が「反ユダヤ主義」を理由に突然拘留された事件は大きく報じられました。報道では、この学生が大学新聞にガザ市民の人権に関する記事を共同執筆したことで当局の標的になった可能性が指摘されています。
内田准教授は、「法的な手続きや審査を経ずに留学生たちの在米資格が危うくなる状況が発生している」ことを示唆し、「自分が同様の状況に陥った場合、果たして自分の権利や法的保護は尊重されるのだろうか」という強い恐怖と不安を、留学生や外国人教員全体が感じながら日々を過ごしている、と指摘します。
研究費削減と大学運営への圧力
二つ目は、トランプ政権が科学研究費の大幅な削減や、ハーバード大学に対する助成金の一部凍結など、大学の運営面へ継続的に圧力をかけていることです。一連の予算削減は、アメリカ国内の多くの研究者の給料確保を困難にする恐れを生んでいます。
内田准教授は、「ポスドクや博士課程の学生などの給料も支払えなくなると、彼らの生活に直結し、相当なダメージとなります」と話します。予算削減は、単に現在の研究活動への影響だけでなく、将来的な米国の科学技術力や学術研究の発展にも影を落としかねません。
アカデミアからの人材流出
実際、内田准教授の周囲では、若手研究者が既にアメリカ以外の国に移動したり、研究費獲得の困難さからアカデミアを離れ、安定した資金を求めて製薬会社などの企業へ人材が流出しており、大学側の研究力低下も懸念されます。
まとめ
このように、トランプ政権による大学への圧力は、研究資金の不安定化や留学生・研究者の権利への懸念を生み出し、米国の学術界に深刻な影響を与えています。アカデミアからの人材流出も現実のものとなっており、「トランプショック」がもたらす影響は広範囲に及んでいます。