米ハーバード大へのトランプ氏の圧力 背景に中国・反ユダヤ主義

米国のトランプ前大統領が、名門ハーバード大学に対する圧力を強めています。その背景には、学内での反ユダヤ主義の高まりや、中国による米学術界への影響力浸透に対する強い懸念があります。トランプ氏はかねてより、東部の名門大学群である「アイビーリーグ」を「腐敗したリベラルエリートの温床」とみなし、敵対視する姿勢を示してきました。こうした動きは、今後、米国内の大学における外国人学生や研究者の排除につながる可能性を秘めています。

ハーバード大学への圧力強化について語るトランプ前米大統領ハーバード大学への圧力強化について語るトランプ前米大統領

圧力の背景にある懸念点

トランプ氏がハーバード大学への圧力を強める最大の要因の一つは、中国との関係性に対する強い不信感です。トランプ氏はかつて、「中国共産党は数千人の中堅・高級官僚を米国に派遣しており、特にハーバード大学は海外にある『党の学校』だ」と厳しく批判しました。同氏は、ハーバード大学への留学生や外国人研究者の入国を一時停止する大統領布告に署名した際も、特に同大学と中国との関係を「蜜月」と呼び非難しました。

「中国共産党の学校」批判

具体的には、習近平国家主席の娘が2010年代初頭に在籍していたことに言及し、ハーバード大学が1億5000万ドル(約217億円)以上の資金を受け取る見返りに、中国の準軍事組織を受け入れたり、軍事近代化につながる可能性のある研究を行ったりしたと批判しています。ロイター通信も、同大学が2020年以降、中国の準軍事組織である新疆生産建設兵団に対して研修を実施したと報じています。トランプ政権は、こうした状況について「敵対勢力が米国の名門大学に容易にアクセスし、情報を盗むことは国家安全保障上のリスクだ」と懸念を示しています。

反ユヤ主義とDEIへの批判

また、トランプ氏は、ハーバード大学を含む名門大学における反ユダヤ主義への対応が不十分であるとして、今年3月以降、圧力を強化しています。これは、イスラエルへの抗議デモが全米の大学で頻発し、一部で暴力的行為が見られたことを念頭に置いたものです。トランプ氏は、こうした「暴力的事件の扇動者の多くが外国人学生だ」と指摘し、ハーバード大学がこれらの問題に対して適切に対応しなかったと批判しています。さらに、ハーバード大学が推進する多様性・公平性・包括性(DEI)を重視する姿勢についても、トランプ氏は「特定グループを優先し、白人の機会を奪う差別につながる」と問題視しています。

労働者階級の不満と大学構造への意図

トランプ氏のこうした大学エリート層への批判の背景には、自身の主要な支持基盤である労働者階級が抱く、エリート層に対する根強い不満があります。トランプ氏は、ハーバード大学への補助金を職業訓練プログラムに振り分けるべきだと主張しています。また、「多くの留学生が存在するため、本来入学できるはずの米国人学生が入学できない状況がある」とも述べており、これは留学生を含む「リベラルエリート」によって支配されている名門大学の構造そのものを変革したいという強い意図を示唆しています。

結論

これらのトランプ氏によるハーバード大学への圧力強化は、中国の学術界への影響や学内の政治的スタンスに対する懸念、そしてリベラルエリート層への批判といった複数の要因が絡み合っています。今後、こうした動きが拡大した場合、米国の大学における外国人学生や研究者の受け入れが制限され、結果として優秀な人材の国外流出を招き、米国の国力低下につながる可能性も懸念されています。

【参照元】
ロイター通信 他 報
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