米国南部アラバマ州で今年5月、孫の高校卒業式に出席するためケニアから渡航した男性が突然、姿を消した。地元警察の懸命な捜索にもかかわらず、7週間が経過した今も安否は不明のままだ。
米国への到着と突然の失踪
リューベン・ワイサカさん(72)は5月14日、孫の高校卒業式を6日後に控える中、ケニアから1万3000キロ以上のフライトを経て、息子一家が住むアラバマ州カレラへ到着した。スーツケースには息子の若い頃の写真や、息子、孫、自身用のアフリカ柄プリントの揃いのシャツなど、心温まる手土産が詰められていた。しかし、3世代が誇らしげに揃いの服を着て並ぶ機会は叶わなかった。
米国アラバマ州で失踪したケニア人男性、リューベン・ワイサカさん(72歳)の写真。
ワイサカさんは、米国に降り立った翌朝の午前11時8分、息子の家から徒歩で外出後、そのまま姿を消した。
防犯カメラが捉えた最後の姿
バルア家の玄関カメラは、午前11時8分に自宅を出るワイサカさんの姿を捉えていた。その服装は、カーキのズボンに青と白のチェックシャツ、黒い靴というきちんとした格好だった。約30分後、約3キロ離れたガソリンスタンドの防犯カメラにワイサカさんが映っていたのが最後に確認された姿となった。店員に手を振った後、トイレに入り、裏口から出て行った。
続く捜索活動と家族の苦悩
それから7週間が経過したが、有力な手掛かりは得られていない。警察は人口約1万9000人の町カレラとその周辺の雑木林を、ヘリコプター、ドローン、オフロード車、追跡犬、赤外線カメラなどを駆使して広範に捜索しているが、何も見つかっていない。
息子のウィリングトンさんは、「なぜ息子の卒業式に両親を呼んだのか後悔することもある。私が何か違う行動を取れていればと自問してしまう」と苦悩を語っている。家族はワイサカさんの足取りを辿り、防犯カメラ映像を何度も見返して手掛かりを探している。身長165センチ、体重73キロの男性が、ほとんど知らない外国で白昼に忽然と姿を消した事実に、家族は困惑している。
考えられる可能性と専門家の意見
家族はまた、ワイサカさんに実は認知症などの病気があり、旅先でのストレスがその発症のきっかけになった可能性も考慮している。専門家は、認知症患者がふらりと外出するのは珍しくなく、特に慣れない環境では起こりやすい行動だと指摘する。
家族の尽きない希望と懸念
娘のエミリーさんは、「父はとても怖い思いをしているに違いない」と声を詰まらせる。そして、「希望を持ちたいと本気で思う。でも、暑さの中でどこかに座り込んで眠ってしまい、二度と目覚めなかったのでは、と考えてしまう時もある」と複雑な心境を明かした。家族は、ワイサカさんがいなくなるまでの様子を繰り返し振り返り、異変の兆候を見逃していなかったかと自問自答を続けている。
この失踪事件は、リューベン・ワイサカ氏の家族に計り知れない不安を与え続けている。広範な捜索活動が行われているにも関わらず、有力な手掛かりはなく、彼の安否は依然として謎に包まれている。