国産米価格高騰で海外産米が急増 政府は「緊急輸入」も検討か

私たちの食卓に欠かせない国産米が、価格高騰によりその地位を揺るがしています。背景には、海外産米の輸入急増があり、政府も対応を迫られています。

大阪市生野区にある業務用スーパー「C&Cエンド」。こちらでは現在、国産米、アメリカ産米に加え、台湾産米が販売されています。販売されている台湾産米「むすびの郷」は、5kg4082円(税込み)で、輸入時には1kgあたり341円の高い関税が課せられていますが、国産の銘柄米と比較すると安価です。

C&Cエンド本店の土木拓也店長によると、国産米より500円から1000円ほど安く提供できており、国産米の価格高騰を受け、まず比較的安価なカリフォルニア産米の扱いを始めました。最近になってカリフォルニア産米も高騰したため、台湾産米の輸入に至ったといいます。「選択肢のひとつとして、日本の味に近いお米を探したところ、台湾産にいきついた状況です。日本人の口にあう」と土木店長は語り、国産の銘柄米と安価な米を用意することで、利用しやすい方を選べるようにしています。

大阪市生野区の業務用スーパー「C&Cエンド」で販売される台湾産米「むすびの郷」大阪市生野区の業務用スーパー「C&Cエンド」で販売される台湾産米「むすびの郷」

こうした海外産の精米の民間輸入量は現在急増しており、貿易統計によれば、2024年4月分は6838トンに達し、これは2024年度全体の2.3倍という驚異的な増加を見せています。国産米が高止まりする中で、海外産米への関心が高まっている状況です。

政府の動き:小泉農水大臣の「緊急輸入」発言

6月6日には、小泉進次郎農水大臣がコメの価格安定に関して注目すべき発言をしました。政府備蓄米の在庫がなくなった場合を想定し、「緊急輸入も含めて、あらゆる選択肢を私は持って向かいたい」と述べたのです。

小泉大臣は、他の農産品を引き合いに出し、「足りないときは当然やってる。鳥インフルエンザで卵がないといったらブラジルから卵入れてますし、聖域なくあらゆることを考えて、コメの価格の安定を実現していく」と、緊急輸入を辞さない構えを示しました。これは、政府がコメの価格安定のために海外からの緊急輸入を検討していることを明らかにしたものです。

米の価格安定について発言する小泉進次郎農水大臣米の価格安定について発言する小泉進次郎農水大臣

過去の教訓:1993年の米不足と緊急輸入

政府によるコメの緊急輸入は、およそ30年前に実際に行われたことがあります。1993年、記録的な冷夏による大不作でコメ不足が発生し、政府は緊急輸入を決定しました。この時、タイ米やカリフォルニア米などが大量に日本に持ち込まれました。

当時の状況を示すエピソードとして、海外米に慣れてもらおうとカリフォルニア米だけを使った「天丼店」が登場しました。その評判は、利用客がカリフォルニア米100%と聞いても「気付きませんでした」と答えるほど、国産米との違いが分かりにくかったようです。

1994年、米不足を受けてカリフォルニア米を使った天丼店で食事する客1994年、米不足を受けてカリフォルニア米を使った天丼店で食事する客

一方、タイ米は国産米とは異なる味や食感が当時の日本人の嗜好に合わず、スーパーで売れ残りが「たたき売り」されるという事態も発生しました。

1993年の緊急輸入で不人気だったタイ米がスーパーでたたき売りされる様子1993年の緊急輸入で不人気だったタイ米がスーパーでたたき売りされる様子

専門家の見解:価格安定に向けた攻防

32年前のような形で海外産米が日本の食卓に広く浸透することになるのか、現在の状況について農業政策の専門家は指摘しています。宮城大学名誉教授の大泉一貫氏は、小泉大臣の緊急輸入発言について、「要するに綱引き、せめぎ合いがまだ続いているということですよ。価格を落ち着かせるかどうか、それがせめぎ合いになっているわけです」と分析しています。国内の生産者保護と消費者への安価な供給という二つの側面の間で、政府が難しい判断を迫られている状況が伺えます。

国産米の価格高騰とそれに伴う海外産米の輸入急増は、日本の食料供給体制と消費者の選択肢に変化をもたらしています。政府の緊急輸入検討発言は、この問題がすでに看過できないレベルに達していることを示唆しており、今後の動向が注目されます。30年前の経験を踏まえ、どのような政策がとられるのか、そして海外産米が日本の食卓にどのように受け入れられていくのか、不確実な要素を含んでいます。

【参考資料】
MBSニュース via Yahoo!ニュース
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