介護が必要な人は増え続けているのに、慢性的な人手不足にあえぐ介護業界。助けを求めようとする家族の葛藤、介護される本人のわびしさ、そして現場で働く介護職にスポットを当てた短編映画「もう一歩」が公開された。
* * *
「これでいいのかな。もっと2人でできることあったんじゃないかな」
「両方は無理だよ! 俺だって農業始めたばっかりなんだから!」
11月11日の「介護の日」に合わせて公開された短編映画「もう一歩」。失禁やリモコンを冷蔵庫に入れてしまうなど認知症の進んだ高齢の父、独身で同居する息子、子育て中で週末に通って介護を手伝う娘が登場する。在宅介護の限界を感じた兄と妹は、介護施設に父を預けることを決断したが、帰り道の車の中で激しく言い争ってしまうーー。かつては仲が良かった一家が介護をきっかけに崩れていく様子がリアルに描かれている。
■介護を必要とする人は700万人超
いま日本の65歳以上の高齢者は、人口の29.4%と過去最高を更新し、全世帯数の約半数が65歳以上がいる世帯となっている(2025年9月15日現在)。何らかの介護を必要とする人は現在700万人を超え、2040年には約1000万人に達するとみられている。比例して「介護をする人」も増え続けるなか、多くが一度は悩むのが「自宅」か「施設」かの選択だ。
「誰もがみな年をとります。年をとることも、認知症になることも施設に入ることもネガティブな事ではないんです。家で親を看られなくて施設に預けたということは、決して親を捨てたことではなく、その人らしく輝ける可能性のある場所に預けた、ということなんです」
そう語るのは、映画で介護総合監修を務めた「KAiGO PRiDE」の理事で介護職歴33年の石本淳也さん(54)だ。「老々介護」や「介護離職」に直面し、プロの介護職に頼りたくても、不信感や不安感があったり、介護施設に預けることに罪悪感を覚えたり。介護サービスの利用にも二の足を踏む人は少なくない。「そんな介護のイメージを変えたい」(石本さん)というのが、映画に懸けた思いだ。






