カナダで今月15~17日に開催される先進7か国首脳会議(G7サミット)において採択が見込まれる合意文書案の一つ、重要鉱物分野の原案が明らかになった。この合意案は、世界最大のレアアース(希土類)生産国である中国への輸入依存度を減らすことを主眼に置き、調達先の分散化に向けた具体的な目標や期限を盛り込んだ工程表を年内に策定することを柱としている。米国の保護主義的な政策やロシアのウクライナ侵攻への対応でG7内の足並みが乱れる状況下、サプライチェーン(供給網)の安定化は共通の優先課題と位置づけられている。
今回のG7サミットでは、参加各国は共同の首脳宣言の採択を見送り、個別の重要テーマごとに合意文書を発表する方向で調整が進められている。これは、トランプ政権が推進する高関税政策や、ロシアによるウクライナ侵略への対応を巡るG7間の見解の相違が表面化することを避けるための措置だ。重要鉱物分野の他には、人工知能(AI)や山火事対策など、比較的合意形成が容易とされる7つの分野で文書が準備されている。
入手した重要鉱物分野の合意文書原案では、「我々は国家安全保障と経済安全保障において共通の利益を有している」と明記し、特定の国名を挙げずとも中国への過度な依存がもたらすリスクに言及している。「重要鉱物の調達基準に基づいた(新たな)市場を形成するための工程表を策定する」ことが具体的に盛り込まれており、日米欧が共通の基準を設け、基準を満たす採掘事業者や投資企業に対し、各国政府が補助金などを優先的に支出する方針も含まれている。
調達基準に関しては、イタリアで開催された前回のサミットで、価格のみに捉われず、調達元の透明性や信用性といった「非価格基準」も考慮するという原則が確認されていた。この原則を迅速に実行に移すため、欧州の外交筋によると、工程表には以下のような課題に期限を設けることが想定されている。具体的には、国際機関や主要な鉱物採掘国、関連企業との詳細な協議、より具体的な調達基準の策定、そして企業向けのガイドライン作成などが含まれる。
ガイドラインの内容としては、「調達基準に満たない特定の国からの輸入比率を一定以上にしない」といった目標値が設定される見込みだ。G7は、この取り組みにメンバー国以外の国々にも賛同を呼びかける方針を固めている。レアアースは、電気自動車(EV)やスマートフォン製造に不可欠な素材であり、世界の生産量の約7割を中国が占めているのが現状だ。中国は以前から、米国による高関税措置への対抗策として、レアアースの輸出規制を示唆する動きを見せている。
G7首脳会議での記念撮影、重要鉱物合意を議論する各国リーダー
結論
今回のG7サミットで議論される重要鉱物に関する合意文書案は、中国への依存度を減らし、より強靱で多様なサプライチェーンを構築するというG7各国の強い意志を示すものだ。非価格基準の導入と、具体的な工程表策定による実行力の強化が鍵となる。これは、経済安全保障の観点からも、今後の国際的な資源調達戦略に大きな影響を与える可能性がある。G7が主導し、非加盟国にも協力を呼びかけることで、新たな国際的な調達市場の形成を目指す動きは、安定した資源供給の確保に向けた重要な一歩となるだろう。
参考文献