前回記事『習近平の「一言」がきっかけで、中国が沖縄を狙い始めた…! 共産党「浸透工作」の実態を暴く』では、中国共産党・政府の各部門が、習近平の一言をきっかけに「対沖縄工作」に乗り出した姿を伝えた。
中国が、学界やネットの工作アカウントを通じて沖縄独立論を扇動するなか、中国要人の頻繁な訪問や、習近平と密接な団体による玉城デニー知事や県庁へのアプローチが繰り返される現状は、日本の安全保障上の大きな懸念だ。
一方、玉城知事や県庁は、一連の「工作」を無批判に受け入れているようにも見える。その内情をルポライターの安田峰俊氏が追った。
台湾との関係は最悪
「(知事は)完全に中国寄りで、台湾に対して友好的ではない態度を示している」
「現在、台湾と沖縄県庁との関係は、日本全国(の都道府県の中)でワーストだと言っても過言ではない」
今年5月8日、台北駐日経済文化代表処那霸分処の王瑞豊処長が、沖縄の地元ニュースサイトに語った談話である。台湾と日本は正式な国交がないが、彼は実質的な総領事に相当する。
記事は日台関係筋や沖縄県庁で物議を醸し、ほどなく削除された。王処長も発言を事実上撤回している。だが、中国の対沖縄工作への台湾の焦りを示すものだったのは明らかだ。
一方、筆者の取材に応じた玉城知事はこの件を「単なる行き違いだった」と釈明する。
「従来、台湾側の双十節(建国記念日)に知事か副知事が出席していたのが、コロナ禍後に2年連続で県の部長が行き、王処長を悩ませてしまった。彼とはすでに会い誤解を解いています」
2022年3月に王処長が赴任した後、県側が露骨に外交ランクを下げたように見えたことが、「問題発言」が出た直接の理由だった。
知事は誤解と弁明するが、沖縄県の台湾に対する冷淡な対応はこれだけではない。
玉城知事や照屋義実副知事は中国の高官と頻繁に会う一方、2023年7月に来沖した游錫堃・台湾立法院長には会っていない。游院長の訪問先は離島の与那国島だったとはいえ、台湾側の国会議長に相当する要人の訪問を無視した形だ。
また玉城知事は2023年11月の訪台で、中国への配慮を理由に、台湾政府や政党関係者と一切面会しなかった。台湾では知事の姿勢を訝る報道が多く出ている。