シリア暫定政府、公共の海辺で「ブルキニ」着用義務化 – イスラム統治強化の一環か

シリアの新しい暫定政府は、公共の海辺やプールでの服装に関する厳しい新規定を発表しました。特に、女性に対して露出の少ない水着であるブルキニやそれに類する服装の着用を義務付ける内容で、国民生活へのイスラム的価値観の浸透が注目されています。この措置は、長年の内戦を経て樹立された新政権の社会規範へのアプローチを示すものと考えられます。

新しい服装規定の詳細

シリア暫定政府の観光大臣は、公共の海辺やプールでの新たな服装指針をソーシャルメディアで公開しました。この指針では、観光客、地域住民を問わず、すべての利用者に「大衆の雰囲気と社会の各層の感受性を考慮した適切な水着」の着用を義務付けています。具体的には、女性は露出の少ないブルキニまたは身体をより広く覆う水着が必須とされました。また、海辺とその他の場所を行き来する際には、水着の上にビーチカバーアップやゆるいガウンを着るよう推奨されています。男性は水泳区域内でのみ上着の脱衣が許され、プールサイドやホテルのロビーなど、水泳区域外では上着を着用する必要があります。公共の場全般では、肩と膝を覆うゆるい服が推奨され、透明または体に密着しすぎる服は避けるべきとされています。ただし、4つ星以上のリゾートやホテル、および私設の海辺やプールでは、一般的な西洋式水着の着用が例外的に認められています。指針に違反した場合の具体的な罰則は現時点では不明瞭ですが、観光省は監視員が遵守状況をチェックすると表明しています。

シリアの新しい服装規定導入を受け、ベルリンの露天風呂でブルキニを着用する若い女性の姿。公共の場で露出を控える服装の例示。シリアの新しい服装規定導入を受け、ベルリンの露天風呂でブルキニを着用する若い女性の姿。公共の場で露出を控える服装の例示。

背景と新政権の動向

この新しい服装規定は、長年の内戦終結後にシリア暫定政府を主導するイスラム武装組織「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)の影響力が強く反映されたものとCNNは報じています。HTSは過去、米国や英国によってテロ組織に指定された経緯があります。この指針について、サーリハーニー観光大臣は「シリアの文化・社会・宗教的多様性を尊重したもの」だと主張しています。暫定政府を主導するアフマド・アルシャラ臨時大統領は、HTSの指導者として昨年12月にアサド政権を崩壊させた立役者です。内戦終結から7週間後の今年1月29日に臨時大統領に指名され、3月にはイスラム教の支配を義務付ける5年間の暫定憲法に署名しています。暫定政府は現在、宗教的道徳性を重視した社会政策を積極的に推進しており、今回の公共の場での服装規制もその一環と見られます。

シリア、アサド政権崩壊を祝う女性たちが自撮りをする様子。新政権下の社会変化を象徴する場面。シリア、アサド政権崩壊を祝う女性たちが自撮りをする様子。新政権下の社会変化を象徴する場面。

結論

シリア暫定政府による公共の海辺でのブルキニ着用義務化を含む新たな服装規定は、アサド政権崩壊後の新しい社会秩序構築の一環として、イスラム教の価値観を公共空間に強く反映させる動きを示しています。これは、長年の内戦を経て再出発を図るシリアにおいて、国の将来の方向性を巡る重要な変化であると同時に、国際社会からの注目も集めています。暫定政府が推進する宗教的道徳性を重視した社会政策が、今後どのように国民生活に影響を与えていくのか、今後の動向が注視されます。

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