《今回の判断により、多くの皆さまにご心配やご不信をおかけしましたことを、代表として深くお詫び申し上げます》
国民民主党の玉木雄一郎代表(56)は6月12日、自身のXにこのように投稿し、前日夕方に行った夏の参院選比例区で立候補予定だった山尾志桜里元衆院議員(50)の公認急遽取り消しについて謝罪した。この決定は政治界隈を中心に大きな波紋を呼んでいる。
擁立決定とその背景にある過去の問題
国民民主党が山尾氏の擁立を発表したのは5月14日だったが、当初からこの決定には疑問の声が上がっていた。その背景には、山尾氏が過去に複数の問題を報じられていたことがある。2016年には「週刊新潮」でガソリンの不正計上問題が報じられ、翌年には「週刊文春」で弁護士の倉持麟太郎氏(42)との不倫疑惑が持ち上がった。さらに、2021年にも同誌の報道で議員パスの不正利用問題が浮上するなど、有権者からはその資質を問う声が度々上がっていた。
出馬会見と厳しい世論の反応
こうした過去の問題を抱える中、山尾氏は6月10日に開いた出馬会見で、自身の問題について釈明し、謝罪の言葉を述べた。しかし、倉持氏との男女関係については否定したものの、倉持氏の元妻が2020年に自死していたことが翌年の「週刊文春」で報じられていた経緯もあり、記者からは厳しい指摘が飛んだ。「立候補する資格があるのか」といった質問に対し、山尾氏は元妻の自死に関しては「事情を存じ上げない」「お話は勘弁いただきたい」などとして詳細な説明を最後まで避けた。この対応はSNS上でも「説明責任を果たしていない」として猛批判を浴びることとなった。
公認取り消しの決定と代表の説明
国民民主党は会見での山尾氏の対応と世論の反応を受け、事態を重く見ていた。そして、6月11日に開催された両院議員総会で、山尾氏の参院選公認を取り消すことを正式に決定した。玉木代表は同日、記者団のぶら下がりに応じ、公認取り消しの理由について説明を行った。「どんな人にもチャンスを与えるというのが私たちの政治姿勢であり、その観点から擁立をしました。ただ、正直、有権者や全国の仲間、支援者から十分な理解と信頼が得られないと判断しました。代表の私にも責任があると思っています」と述べ、国民や党内外からの支持を得られないと判断したための方針転換であることを強調した。
擁立発表からわずか1カ月足らずでの急転直下の展開となった。山尾氏の会見内容にはいまだ多くの疑問点が残されており、今回の公認取り消しに至る経緯は複雑な様相を呈している。
国民民主党の玉木雄一郎代表、参院選比例区候補の公認取り消しについて説明
(写真:時事通信)
玉木代表と党執行部への批判
山尾氏の過去の問題は公認を決定する段階で認識されていたはずであり、そうであるならば党として最後まで候補者を支えるべきだったのではないか、という批判がインターネット上、特にX上で玉木代表や党執行部に対して多く寄せられている。
《山尾さんの過去など分かって、過去を受け止めての公認のはずなのに、公認しといてやっぱり止めたじゃ、山尾さんがかわいそうですよね》
《山尾さん云々より、急に公認を取り下げた玉木さんに違和感あり。山尾さんの過去を知ってて公認を立てたんだから、国民民主党は最後まで責任をもって守り切るのが筋だと思う。それが出来ないならはじめから、候補に立てたらあかんと思う》
《国政復帰を夢見させて、邪魔だと思えば簡単に切り捨てる。事前にこうなることを予測出来ない時点で、玉木雄一郎は政治家として終わってる》
《山尾氏に対するこの仕打ちに、、玉木代表の性根を見た気がします人として最低だろ》
これらの声は、一度は公認を決めたにも関わらず、世論の批判を受けて候補者を見捨てるような党の姿勢に対する不信感を示している。特に、衆院初当選同期(2009年)でもある玉木氏が山尾氏の政界復帰を強く望んでいたと報じられていることもあり、批判を受けた直後に「仲間を切る」ように見えた今回の対応は、リーダーシップのあり方についても疑問を投げかけている。
過去にも繰り返された公認取り消し騒動
国民民主党で公認取り消しをめぐる騒動が起きたのは、今回が初めてではない。2024年2月には、同年4月に行われた衆院東京15区補欠選挙で擁立を予定していた元フリーアナウンサーの女性の公認を取り消している。この際、女性は自身のXで《党から『立候補を断念しろ』と言われ、涙をのんで引き下がることに致しました。理由は、ラウンジで働いていた過去があるからです》と告白し、これが「職業差別ではないか」との批判を呼んだ。
これに対し、玉木代表は職歴は公認取り消しとは無関係であり、「党として看過できない法令違反」があったと説明した。しかし、「法令違反」の内容が具体的に明らかにされなかったため、党の説明不足を指摘する声が多く上がっていた。
一方、この女性候補者をめぐっては、ラウンジ勤務をしながら生活保護を不正受給しているとの批判がSNSで拡散されており、これが「法令違反」にあたるのではないかという見方も一部では存在した(女性は否定していた)。後に、この女性は2024年9月に自宅マンションで倒れているところを発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。自死と見られている。
度重なる候補者の公認をめぐる「ドタバタ」は、秋の衆院選で議席数を大きく伸ばし勢いに乗るかに見えた国民民主党の足元を揺るがしている。この状況のまま、勝負の夏である参院選を迎えることになるのか、党の動向が注目されている。