パチンコホール業界、激減するも売上高10年ぶり増 – スマスロが鍵か?

日本のパチンコホール経営を取り巻く業界動向に注目が集まっている。経営法人数は減少の一途をたどる厳しい事業環境が続く一方で、近年続いていた総売上高の低迷期からは脱出し、10年ぶりに前年を上回ったことが明らかになった。

2024年のデータベース登録法人数は1201社となり、前年から135社(10.1%減)減少した。2015年の2618社からは、10年間で1417社(54.1%)と半数以上が姿を消した計算になる。

一方、総売上高は11兆7133億円となり、前年比5.0%増加。これは過去10年で初めて前年を超えた形だ。コロナ禍での大幅減を経て減少幅は縮小したが、10年前の2015年からは10兆円以上減少している点は変わらない。売上増の背景には、店舗売却や買収による運営法人の淘汰が進んだことに加え、2022年登場の「スマートパチスロ(スマスロ)」の影響が大きい。特に人気シリーズのスマスロ化は、ホールから離れたファン層を呼び戻す一定の成果を上げた。スマスロの既存機より高い出玉性能や凝ったゲーム性も好調要因とされる。

日本のパチンコホール経営法人数と総売上高の推移(2015年-2024年)日本のパチンコホール経営法人数と総売上高の推移(2015年-2024年)

損益状況の改善と中小ホールの課題

2024年に損益が判明したパチンコホール経営法人445社の分析では、黒字企業の割合は64.5%だった。コロナ禍の2021年には約6割が赤字だった状況からは回復しており、2年連続で黒字企業が過半数を占めた。しかし、コロナ前の2020年(72.9%)には及ばず、M&Aや廃業による業界再編が進む中でも、赤字経営を余儀なくされる中小ホールが少なくない現状は、依然として厳しい業界環境を示唆している。

パチンコホール経営法人の損益状況(黒字・赤字割合)の分析グラフパチンコホール経営法人の損益状況(黒字・赤字割合)の分析グラフ

倒産件数は減少傾向も淘汰は続く

2024年のパチンコホール経営法人の倒産件数は23件で、前年(24件)よりわずかに減少。2010年以降30件を下回る水準が続いたが、2022年の30件超え、2023年には大手「ガイア」の民事再生法申請と続いた悪化懸念は一旦後退した。2024年は前年を超えず、2025年も5月までで6件と減少傾向が継続。これは廃業やM&Aによる淘汰が進んだ結果と言える。

パチンコホール経営法人の倒産件数と負債総額の推移を示すグラフパチンコホール経営法人の倒産件数と負債総額の推移を示すグラフ

業界再興への道筋と今後の課題

この20年、パチンコ業界は継続的なファン離れに直面してきた。様々な対策やイメージアップ努力が行われる中、2024年はスマスロなどの人気機種リリースにより離れたファンが一時的に戻り、総売上高の増加に貢献した。しかし、これは業界再興にはほど遠い状況であり、地道な活動を通じたファン層の拡大が依然として不可欠だ。同時に、コアなファンを呼び戻すことは回復への近道であることも事実。「出ないホールが多い」というプレイヤーからの敬遠要素をどう解消するかが重要となる。ホールごとの経営努力に加え、メーカー、ホール、プレイヤーが互いにメリットを感じる「三方よし」の体制を再構築し、特に中小ホールが集客を伸ばせる環境整備が今後の鍵となるだろう。