ボストン在住の小児精神科医であり3児の母である内田舞氏は、多忙な夫との間に生じたワンオペ育児の負担と向き合いました。長男誕生後、夫の演奏旅行などで家を空けることが多くなり、一人で育児を担う生活は彼女を精神的に追いつめました。しかし、耐え切れず伝えた言葉が夫に届き、夫婦関係と働き方が大きく変わったと言います。この記事では、内田氏が経験した家事・育児分担の難しさと、夫婦間の対話の重要性について語ります。
子育てにおける家事・育児分担の普遍的な課題
子育てをする上で、夫婦間での家事や育児の分担は最も問題になりやすいテーマの一つです。これは多くの家庭にとって永遠の課題であり、子供の成長段階や夫婦それぞれの働き方の変化、さらには家事・育児に対する価値観の違いなどもあり、双方が納得できるバランスを見つけることは非常に難しいと日々実感されています。特に、名もない細かい家事や子供への精神的なケアなど、目に見えにくい負担は往々にして母親に偏りがちです。母親が日々の家事、食事の準備、送迎、宿題のチェック、そして「早くしなさい」といった日々の声かけなどをほぼ全て担い、父親が週末に子供と遊ぶ、好きな場所へ連れて行くなど、育児の「良いところ取り」をするケースは少なくありません。このような状況は母親にとって大きな不満の種となり、「ワンオペ育児」と呼ばれるような孤立感や疲弊につながることもあります。社会全体が、母親が日々こなしている家事や育児の量、質、そしてその精神的な大変さ、その価値を深く理解し、感謝の念を持つべきです。
我が家のケース:夫婦喧嘩の原因と分担の実態
私たち夫婦はそれほど頻繁に喧嘩をする方ではありませんが、争いの原因となるのは100パーセント、家事や育児の負担に関することです。夫は大学教授でありチェロ奏者として国内外を飛び回るため、多忙な時期と比較的そうでない時期があり、それに合わせて分担も変化します。分担については、一緒に暮らす中で自然に決まったことと、話し合いで決めたことがあります。夫はもともと家事が得意な方で、アメリカ人の中でもかなり積極的に家事をこなすタイプであり、その点は大変助けられています。例えば、日々の食事は夫が作ることが多いです。私は和食を作るのが好きなのですが、ボストンでは日本の食材が限られるため、手に入りやすい食材を使ったアメリカ式の料理が得意な夫が自然とキッチンに立つ回数が増えました。
子育てに奮闘する夫婦のイメージ
家の片付けやメンテナンスも夫の比重が大きいです。彼は細かい部分が気になる性格で、整理整頓や掃除をこまめに行ってくれます。DIYも得意で、棚など簡単な家具もさっと作ってくれるため非常に助かっています。対照的に、私は多少散らかっていてもあまり気にならない性格です。そのため、夫が出張などでしばらく家を空けると、家の中がなんとなく散らかってきます。そして、夫が帰宅するやいざや、気になる様子で掃除を始める、といった光景もしばしば見られます。このような家事や育児に対する考え方、得意不得意、そしてこだわり方の違いが、分担の難しさや、時に衝突の原因にもなっています。
家事や育児の分担は多くの夫婦にとって頭の痛い問題であり、私たちの家庭でもそれが夫婦喧嘩の主な原因となっています。各家庭で最適な分担方法は異なりますが、日々の子育て負担をいかに公平に、そしてお互いを尊重しながら分かち合うかが、夫婦関係を良好に保つ上で非常に重要となります。この普遍的な課題に対し、それぞれの家庭がどのように向き合っていくかが問われています。