今夏の参院選での出馬が予定されていた山尾志桜里氏(50)が、6月10日の記者会見の翌日に国民民主党から公認を取り消されるという異例の事態が発生し、各方面に大きな波紋を広げている。山尾氏は12日、自身のコメントを発表し、党への不満をあらわにしたが、政界関係者からは「人権問題になりかねない」という厳しい声も上がっている。この収束を見せない公認取り消し騒動の背景に迫る。
公認取り消しが明らかになった後の6月12日、山尾氏はコメントの中で「代表・幹事長の同席を希望しましたが、辞退会見であれば同席するとのお答えは大変残念でした。ただ私には辞退の意思はありませんでしたし、会見するという自分の言葉を守る責任がありましたので単独で臨んだ次第です」と述べた。このコメントが事実であれば、国民民主党内では会見が行われる前から、山尾氏の公認を取り下げ、事実上の「山尾氏外し」の方針が固まっていたことになる。
[山尾志桜里氏が国民民主党からの参院選公認取り消し騒動について記者会見を行う様子。]
6月10日の会見終了後、記者が山尾氏に「党内に出馬を辞退してくれという声はあるのですか?」と尋ねた際、山尾氏は「そういうことはないです。ちゃんと会見をやるのが大事だねという声はあります」と答えていた。しかし実際には、山尾氏が党執行部から事実上の「出馬辞退」を迫られていた状況でありながら、予定通り出馬会見を開くという、極めて異様な状況だったと言える。
玉木雄一郎代表をはじめとする国民民主党執行部の対応に対しては、党内外から批判の声が上がっている。国民民主党の元議員は、今回の件について強い憤りを示している。
党内からの批判と過去の事例
ある国民民主党の元議員は、「本当にひどい話です。国民民主党は、SNSでの反応やイメージを優先して、簡単に人を切り捨てる体質があります。昨年も公認を取り消された後に自殺した女性がいました」と語る。これは、昨年4月の衆院補選で国民民主党の公認候補予定者だった20代の元アナウンサーの女性に関する出来事を指している。この女性は、生活保護を受給しながらラウンジで働いていたという疑惑がSNS上で批判を受け、炎上した。女性はこの疑惑を否定したが、国民民主党は「法令違反の可能性がある行為があった」として公認を取り消した。その後、昨年9月に女性は都内の自宅マンション敷地内で亡くなっているのが見つかり、自殺とみられている。
この元議員は続けて、「去年の件も山尾さんの件も、党は実態調査を十分に行うこともなく、何か面倒なことが起きるとすぐに切ってしまう傾向があります。そもそも、山尾さんのこれまでの不倫騒動やガソリン代不正計上問題、議員パスの私的利用疑惑など、玉木代表は彼女を公認する前から全て承知していたはずです。新しく発覚したスキャンダルでもないのに、世間から批判が殺到すると簡単に切り捨てるのはあまりに無責任です。これで山尾さんが精神的に追い詰められたら、どうするつもりなのでしょうか。これは人権問題に発展しかねません」と強く非難した。
党代表による公認取り消しの理由説明
一方、玉木代表は山尾氏の内定取り消しに至った理由について、記者団に対し「街頭でも厳しい声があり、なかなか選挙戦を積極的には展開できないという厳しい声を全ての都道府県県連からも、多くの地方議員からもいただいた」と説明している。これは、党として世論や地方組織の意見を考慮した結果であることを示唆している。
この騒動は、国民民主党の候補者選定プロセスや、危機管理、さらには党として個々の候補者とどのように向き合うのかという根源的な問題に疑問を投げかけている。特に、過去の悲劇的な事例との関連性が指摘されている点は、党の対応のあり方が改めて問われるべきであることを示唆している。