大阪府堺市が管理する施設、特に複数の小学校において、発がん性が極めて高いとされるクロシドライト（青石綿）を高濃度に含む吹き付けアスベストが見つかっていたにも関わらず、市がその事実を十分に公表せず、児童らが石綿を吸引していた可能性が疑われる問題が情報公開請求によって明らかになりました。市は以前から吹き付け石綿の状況を「すべて把握している」と説明していましたが、その後の再調査で新たな実態が判明しています。
見落とされていたアスベスト問題の経緯
堺市は、市有施設における吹き付け石綿の使用状況について「すべて把握できている」との見解を示していました。しかし、2021年8月に公園予定地の施設で、同年9月には日置荘小学校を含む市内の4つの小学校で、これまで見落とされていた吹き付け石綿の使用が相次いで公表されました。この事態を受け、市は2021年11月から2022年6月にかけて市有施設の吹き付け材に関する再調査を実施。その結果、旧幼稚園や複数の小学校など、合計9施設で新たにアスベストの使用が確認されたのです。
鳳南小学校での高濃度青石綿検出
特に問題視されているのが、堺市西区の鳳南小学校のケースです。2022年5月26日までに実施された調査で、北校舎西側階段室の最上階において、外壁パネルの内側に充填されたロックウール吹き付け材からアスベストが検出されました。検出されたのは、基準値（重量の0.1％）ぎりぎりのクリソタイル（白石綿）0.1％だけでなく、最も高い発がん性を持つとされるクロシドライト（青石綿）が実に35％という高濃度でした。この吹き付け石綿は、窓上部とはりのすき間から露出している状態でした。吹き付け材が施工されたのは1970年代とみられ、相当の劣化が予想されるにも関わらず、市側による劣化状況の明確な判定結果は開示されていません。
堺市鳳南小学校の北校舎西側階段室最上階で露出した、高濃度青石綿を含む吹き付けアスベスト箇所。
市教育委員会の対応と保護者への通知
堺市教育委員会は、アスベスト分析結果の報告書が提出された翌日の2022年6月2日、保護者に向けて通知文を出しました。この通知では、吹き付け材からアスベストが検出された事実は認めたものの、階段室内の空気環境測定の結果は「検出できる下限値（0.11本/L）に満たない」濃度であり、「アスベストは検出されませんでした」と伝えていました。
市はさらに、この場所が「屋上階には教室等の部屋はなく、また普段から立入禁止措置を行っているため、児童等がこの階へ行くことはありません」と説明しました。しかし、実際に行われた立入禁止措置は、階段下に掲示物を貼った上で、工事現場などで使用される「コーンバー」を1本設置しただけという不十分なもので、誰でも容易に通り抜けることが可能な状況でした。
さらに指摘されているのは、市の空気環境測定が、誰もいない環境で実施する「静音測定」だったという点です。これは、児童らが日常的に階段室を利用している実際の状況とは大きく異なるにも関わらず、たった1回の測定結果をもって「安全宣言」としていたことになります。高濃度で発がん性の高い青石綿が露出していたにも関わらず、市の対応と情報公開の姿勢には、安全確保への懸念が残る結果となっています。
まとめ
堺市が管理する複数の小学校、特に鳳南小学校において、最も危険な青石綿が高濃度で検出され、しかも露出していたにも関わらず、その事実が十分に公表されず、保護者への説明も実態と乖離している可能性が明らかになりました。市の「すべて把握」という説明や、不十分な安全対策、実態にそぐわない空気測定結果に基づく「安全宣言」は、児童の健康と安全に対する市の認識や対応の甘さを浮き彫りにしています。情報公開によって初めて明らかになったこの問題は、他の市有施設や学校におけるアスベスト管理の現状についても、改めて検証が必要であることを示唆しています。
