テレビ朝日系で土曜午後6時に放送されているドキュメンタリー番組『人生の楽園』は、俳優・西田敏行さんの温かいタイトルコール「今週は何かいいことありましたか。私ね、思うんですよ。人生には楽園が必要だってね」で始まります。日本の憧れの田舎に移住したり、故郷に戻ったりして第二の人生を送る人々の豊かな暮らしを紹介し、新たな生き方のヒントを与えてくれるこの長寿番組は、2000年の放送開始から25年を迎えました。一体、どのようにして魅力的な主人公たちを見つけ出し、昨年10月に亡くなった西田さんのタイトルコールを今も使い続けているのでしょうか。番組の舞台裏について、杉山かおりプロデューサーに話を聞きました。
番組立ち上げ時のコンセプトと「ご褒美」論の変化
番組が始まった2000年当時、戦後ベビーブーム世代が定年を迎えようとしていました。その世代に向けて「第二の人生」を提案する番組として企画されたのが『人生の楽園』です。タイトルコールには「また、これから新しい人生が始まるよ」という、新しい生き方を応援するメッセージが込められていました。初代ナレーターの一人であるいかりや長介さんの声で、「頑張って人生を歩んできた人にはご褒美があっていい、それが人生の楽園」というナレーションがあったように、当初は会社や家族のために尽くしてきた人が、退職後の60歳以降を自分へのご褒美のように過ごす、というコンセプトでした。しかし、この「ご褒美」としての第二の人生という捉え方は、時代と共に変化しているといいます。
『人生の楽園』番組ロゴとオープニングシーン、放送開始25年を迎えるテレビ番組の象徴
セカンドライフ像の変化：30代・40代へ広がる世代と新たな幸せの形
杉山プロデューサーによると、現在移住などを考えている層は30～40代がボリュームゾーンになっているとのこと。番組で紹介する主人公も、60歳以降に限らず、50代や40代で「これまでの価値観は正しかったのか？新しい人生を始めたい」と考える人々が増えています。今の主人公は、単なる「ご褒美」ではなく、苦労を伴いながらもそこに新しい幸せの形があると信じて、一歩踏み出した方が多いそうです。これは25年間での大きな変化として感じられています。年金だけでは豊かな第二の人生が現実的でなかったり、体力・気力が残る若い世代の方が新しい一歩を踏み出しやすかったりする、といった現代の社会情勢も影響しているのかもしれません。
25年愛される番組の魅力：時代の象徴としての主人公と唯一無二のナレーション
放送開始から25年が経ち、番組のパッケージは変わっていませんが、登場する主人公は常にその時代を象徴するような人々に変化しながら今に至っています。杉山プロデューサーは「今、どういう生き方が共感を得られるのか、どういう方が応援してもらえるのか、常に考えています」と語ります。そして、番組のもう一つの大きな魅力として挙げられるのがナレーションです。『人生の楽園』は掛け合いナレーションの先駆けであり、二人のナレーターが主人公と視聴者の両方に寄り添うスタイルは唯一無二であり、これが多くの支持を得ている要因だと分析しています。
西田敏行さんの声が響き続ける理由とナレーションの舞台裏
番組にとって欠かせない存在だったのが、メインナレーターを務めた西田敏行さんです。昨年亡くなられた後も、西田さんの声で番組を続けてほしいという声が視聴者から数多く寄せられました。「西田さんへの『ありがとう』という感謝の声と同じくらい、本当に多くの方から『何とか西田さんの声で番組を続けてもらえませんか』という声が寄せられました」と杉山プロデューサーは明かしました。その熱い要望に応えるべく、番組側は西田さんのタイトルコールを継続することを決定しました。西田さんのナレーションには、主人公の生き方に共感しつつ、視聴者の気持ちにも寄り添う独特の魅力がありました。杉山プロデューサーは、台本に書かれていない「へっへっへ」のような含みのある言葉を加えたり、逆に不要な部分を削ったりと、西田さんが自ら「すてきな味付け」を施していた舞台裏を語り、「微妙で繊細な部分を大切にされる方でした。ちょっとした足し引きでぐっと深みと温かみが増しました」と、その貢献の大きさを強調しました。
25年という長きにわたり愛され続ける『人生の楽園』は、時代の変化に合わせて主人公の姿を変えつつも、新たな生き方に挑戦する人々への温かい眼差しと、西田敏行さんの声に象徴される寄り添うナレーションで、多くの視聴者に共感と感動を与え続けています。
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