国民民主党の榛葉賀津也幹事長は12日の参院外交防衛委員会で、尖閣諸島周辺での中国軍機の異常接近が続く現状について強い懸念を示し、日本の対応が中国の「認知戦」に陥っている可能性を指摘した。従来の海上での活動に加え、空からの接近事案が頻発しており、「海から空にフェーズが変わった。相当危機感を持つべきだ」と強調した。
参院外交防衛委員会で質疑を行う国民民主党の榛葉賀津也幹事長と岩屋毅外相
中国軍機・ヘリの異常接近と中国の正当化
中国による尖閣諸島周辺での挑発行為は続いており、5月3日には海警局艦船のヘリコプターが初の領空侵犯を行った。さらに6月7、8日には、中国空母艦載機が海上自衛隊のP3C哨戒機に対し、わずか45メートルまで異常接近する事案が発生した。中国軍機による異常接近は、2014年以来となる。
中国側はこれらの事案に対し、「日本の小型民間機が先に尖閣(釣魚島)領空に侵入した」「日本の艦艇や軍用機が中国の正常な軍事活動に接近偵察しているのが根本原因だ」などと主張し、自らの行動を正当化している。
日本領土である尖閣諸島の位置を示す地図
「認知戦に完全に陥っている」との強い懸念
榛葉氏は、質疑に先立ち見た「変な夢」として、中国ヘリが尖閣上空で不時着し、中国軍が人命救助を名目に多数上陸する状況を語り、「深く考え込んで寝られなくなった」と述べた。これは、中国の認知戦がいかに人々の心に影響を与えるかを示唆するものだ。
続けて榛葉氏は、特に与党や政府内部に「日本の民間機による飛行が事態を誘発した」「日本が先に動いたせいで中国の領空侵犯を招いた」といった論調があることに強い疑問を呈した。こうした考え方は、「まさに中国の認知戦に完全に陥っている状態」だと指摘した。
これに対し、岩屋毅外相は「中国の認知戦のわなに陥っているとの指摘は当たらない」と反論したが、榛葉氏は「中国はサラミをスライスするように、日本の心の中にも徐々に入り込んでくる」と述べ、油断ならない状況であることを改めて訴えた。
尖閣への公務員常駐を改めて提言
さらに榛葉氏は、自民党が過去の衆院選・参院選公約で掲げながら、その後見送られている尖閣諸島への「公務員常駐」について言及。「今こそやるべきではないか」と政府に実現を促した。
まとめ
尖閣諸島周辺での中国の活動は、海上から空へとその性質を変え、さらに巧みな「認知戦」を通じて日本の国内世論や政府の判断に影響を与えようとしている。榛葉氏の指摘は、こうした多層的な脅威に対する日本の危機意識の甘さを浮き彫りにした。公務員常駐のような具体的な措置も含め、中国の挑発と認知戦に対し、政府がより強固な姿勢で臨むことの重要性が改めて示された形だ。