健康意識の高まりと独自の味わいが牽引し、「濃い系緑茶飲料」市場が急速に拡大しています。特に体脂肪を減らす機能性が注目され、緑茶飲料市場全体の成長を上回る勢いを見せています。
市場の現状と成長要因
苦みや渋みが感じられる濃い系緑茶飲料が市場で勢いを増しています。全国清涼飲料連合会のデータによると、2024年の緑茶飲料生産者販売金額は前年比8.7%増の5252億1900万円。このうち濃い系緑茶飲料は二桁成長を記録し、市場構成比は約2割まで上昇したと推定されます。この好調の背景には、カテキンによる体脂肪低減などの健康イメージ浸透に加え、従来の緑茶とは異なる濃厚な味わいが消費者に受け入れられている点があります。
主要ブランドの牽引と機能性訴求
市場を切り開いたのは伊藤園の「お~いお茶 濃い茶」です。同商品は2017年頃から順調に成長を続け、2019年にガレート型カテキンの働きで体脂肪を減らす機能があることが報告されている機能性表示食品へと刷新されたことで、その勢いが加速しました。その後、サントリー食品インターナショナルの「伊右衛門 濃い味」、コカ・コーラシステムの「綾鷹 濃い緑茶」も同様に機能性表示食品としてリニューアルを実施し、市場全体を盛り上げています。トクホ商品と比較して手頃な価格で購入できることも、普及の一助となっています。
消費者ニーズの変化と製品進化
近年、消費者、特に40代・50代の間で「もっと濃い味わいを」というニーズが顕在化しています。これに応える形で、伊藤園は昨年9月に「お~いお茶濃い茶 PREMIUM STRONG」を発売。同社マーケティング本部副本部長の安田哲也氏は、ターゲットとしていた層に加え、20代の若年層からも支持があり、一部にはエナジードリンク的に飲まれている例も聞くと話しています。同商品の純増効果もあり、昨年の「お~いお茶 濃い茶」販売数量は価格改定の影響を受けながらも前年を上回ったとみられます。
拡大する濃い系緑茶市場を牽引する「お~いお茶 濃い茶」「伊右衛門 濃い味」「綾鷹 濃い緑茶」のボトル写真
昨年、「伊右衛門 濃い味」は大幅に伸長し、濃い系緑茶市場における存在感を高めました。「綾鷹 濃い緑茶」も市場拡大に貢献。さらなる勢いを加えるべく、コカ・コーラシステムは今年5月26日に「綾鷹 濃い緑茶」のリニューアルを実施しました。苦み、渋み、後味のバランスが見直され、濃い味の追求が図られたほか、主要サイズの525mlが650mlに増量され、消費者に向けた価値向上が図られています。各主要ブランドが製品開発とマーケティングを活発化させることで、濃い系緑茶市場は一層の拡大が期待されます。
結論
健康機能性の訴求と独自の濃厚な味わいが奏功し、濃い系緑茶飲料市場は堅調な成長を続けています。主要各社による機能性表示食品としての展開、そして「もっと濃く」といった消費者ニーズに応える製品進化が、今後の市場拡大の鍵となるでしょう。将来的に濃い系緑茶の構成比がさらに高まるという見方もあり、引き続き注目される分野です。