イラン、イスラエルに報復攻撃開始 衝突激化、死傷者多数

イスラエルが13日にイラン国内の核施設などを空爆したことへの報復として、イランは同日夜(日本時間14日未明)、イスラエルに対し、弾道ミサイルなどによる大規模な攻撃を開始した。このイランによる報復攻撃は14日も続き、イスラエルメディアによると、少なくとも3人が死亡、70人が負傷するなど、犠牲者が出ている。これに対し、イスラエルも攻勢を強めており、中東地域での紛争が激化している状況だ。

イランメディアは、今回の報復攻撃で数百発の弾道ミサイルを使用し、波状攻撃を実施したと報じている。ロイター通信などによると、イスラエル軍は米軍の支援を受け、イランのミサイル迎撃を試みたものの、一部のミサイルが防空網をかいくぐり、商都テルアビブなどに着弾した。特に、中部リション・レジオンでは住宅地に直撃し、60代の女性と40代の男性が死亡、少なくとも19人が負傷した。テルアビブ近郊のラマトガンでも、別の60代女性が死亡したと伝えられている。
イランのミサイル攻撃による煙が立ち上るイスラエル中部テルアビブイランのミサイル攻撃による煙が立ち上るイスラエル中部テルアビブ

攻撃開始に先立ち、イランの最高指導者ハメネイ師はテレビ演説を行い、「シオニスト体制(イスラエル)を崩壊させる」と述べ、イスラエルへの本格的な報復攻撃を行う考えを示していた。ハメネイ師直轄の精鋭軍事組織であるイラン革命防衛隊は14日、軍事基地など150カ所以上を今回の攻撃の標的としたことを明らかにした。

イランからのミサイル攻撃を受けて、イスラエルのカッツ国防相は13日、イランが「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と発言し、イランに対する攻撃を強化する姿勢を示した。イスラエル側は、自国の住宅地に被害が出た場合、イランの石油関連施設などを標的にすると表明しており、今後、軍事施設に加えて国家のインフラ施設へと攻撃目標を拡大する可能性を示唆している。
イスラエル上空で迎撃されるイランの弾道ミサイルイスラエル上空で迎撃されるイランの弾道ミサイル

一方、イラン側も、自国のエネルギー施設などがイスラエルに攻撃された場合、同様の報復措置に踏み切る構えを見せている。イランメディアは14日、イランが米国、英国、フランスの3カ国に対し、もし報復攻撃を妨害するような行動に出た場合、中東地域に展開する各国の軍事基地やペルシャ湾などを航行する船舶を「標的にする」と警告したと伝えている。

イスラエルによるイラン国内への空爆も続いている。イスラエル軍は13日、中部イスファハンの核施設などを攻撃したと発表しており、14日には首都テヘランの防空システムなどにも被害を与えたことを明らかにした。イスラエル軍は「今後も戦略的な拠点への攻撃を続ける」と述べている。これに対し、イランメディアは13日にテヘランの住宅街で発生した攻撃により、子供20人を含む60人が死亡したと報じており、双方の発表には食い違いが見られる。

中東地域で緊張が一気に高まる中、国際社会からはイスラエルとイラン双方に「自制」を求める声が強まっている。これに対し、イランのアラグチ外相は13日、英国のラミー外相との電話協議において、イスラエルの攻撃に直面している状況で自制を求められるのは「不当だ」と反発する姿勢を示した。

また、イランの核開発問題を巡っては、15日に仲介国であるオマーンでイランと米国の交渉が予定されている。米メディアによると、トランプ米大統領は13日、「彼ら(イラン)は今真剣に交渉するかもしれない」と述べ、イスラエルの空爆が交渉の進展につながることに期待感を示した。しかし、イラン外務省報道官は14日、地元メディアに対し、イスラエルの攻撃について「米国の協力なしにできるとは想像できない」と語り、今後の交渉に参加するかどうかは「不透明だ」との見方を示している。現在の状況は、両国間の軍事衝突がさらにエスカレートするリスクをはらんでおり、地域全体の不安定化が懸念される。