月6万円台の年金は「少ない」のか?平均額や仕組みを解説

「うちのおばあちゃん、年金が月6万円くらいしかないんだよね」そんな話を聞いたことはありませんか?あるいは、あなた自身の家族がそうかもしれません。高齢化が進む中、年金だけで生活できるのかという不安は、誰にとっても身近な問題です。この記事では、「年金月6万円台って本当に少ないの?」「みんなはどれくらいもらっているの?」という疑問に答えながら、公的な年金の平均受給額や、なぜ人によって受給額に差が生まれるのか、その仕組みについて、厚生労働省や総務省の統計データをもとに分かりやすく解説します。日本の高齢者の年金実態を理解し、将来に向けた備えを考える一助としてください。

月6万円台の年金、その「現実」は?

総務省の家計調査(令和5年)によれば、高齢単身無職世帯の平均的な消費支出は約14万5000円とされており、月6万円ではその半分にも満たないのが現実です。この金額だけで生活を維持することは、非常に困難と言えるでしょう。とはいえ、このような年金額の方が珍しいわけではありません。特に、自営業者や長年専業主婦だった方、非正規雇用で働いていた方など、主に国民年金のみに加入していた期間が長い方に多く見られます。祖母世代において「月6万円台」の年金額は、特定の状況下ではあり得る受給額なのです。

年金と老後資金について考える高齢者イメージ年金と老後資金について考える高齢者イメージ

国民年金と厚生年金、平均額はこれだけ違う

公的年金制度は主に2つの柱から成り立っています。「国民年金(老齢基礎年金)」と「厚生年金(老齢厚生年金)」です。厚生労働省が公表した「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(令和4年度)によると、それぞれの平均月額は以下のとおりです。

  1. 国民年金(老齢基礎年金)

    • 平均月額:5万6368円
  2. 厚生年金(老齢厚生年金)

    • 男性の平均月額:16万965円
    • 女性の平均月額:10万4878円

※厚生年金の平均月額には、国民年金分も含まれています。

このデータからわかるように、会社員や公務員として厚生年金に加入していた人(多くの場合、国民年金にも同時に加入しています)と、自営業者や専業主婦などで国民年金のみに加入していた人とでは、受給できる年金額に大きな差があります。男性の厚生年金受給者の平均は約16万円であるのに対し、国民年金のみの平均は約5.6万円と、3倍近い差があることがわかります。記事冒頭の「月6万円台」という年金額は、国民年金のみの受給額に近い金額であり、制度の仕組み上、こうした金額になるケースは存在します。

なぜ年金額に大きな差が生まれるのか?

同じ「老後」なのに、どうして受け取る年金額にこれほど大きな差が生まれるのでしょうか。主な理由は以下の3点です。

  • 納付期間の違い: 年金額は、原則として保険料を納めた期間に基づいて計算されます。国民年金の場合、20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)保険料を納めることで満額が支給されます。保険料の免除や未納期間があると、その分、将来受け取れる年金額は減額されます。
  • 加入していた年金制度の違い: 国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する基礎的な年金です。一方、厚生年金は会社員や公務員が加入する年金で、国民年金に上乗せされる形で支給されます。厚生年金は現役時代の収入(標準報酬月額や標準賞与額)や加入期間に応じて年金額が決まる「報酬比例部分」があるため、収入が高く、長く厚生年金に加入していた人ほど、国民年金のみの人よりも受給額が多くなります。
  • 繰上げ受給や繰下げ受給の選択: 年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば60歳から64歳の間に「繰上げ受給」を選択できます。しかし、繰上げ受給を選択すると、1ヶ月早めるごとに年金額が0.4%(令和4年4月以降)ずつ減額され、最大で24%減額された年金を一生涯受け取ることになります。逆に、66歳以降に「繰下げ受給」を選択すると、1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ増額されます。

これらの仕組みを理解することで、「月6万円台」の年金が決して特別なケースではなく、加入期間や働き方、受給開始時期によって生じる制度上の結果であることが分かります。

まとめ:年金理解と将来への示唆

高齢者の年金受給額は、加入していた制度、保険料納付期間、そして受給開始時期によって大きく異なります。月6万円台という年金額は、国民年金のみを受給している方などにとってはあり得る金額であり、平均的な生活費から見れば厳しい水準です。厚生年金加入者との間には、現役時代の働き方や収入を反映した構造的な差が存在します。自身の、あるいは家族の年金がどの程度になるのかを正確に把握し、公的な年金制度の仕組みを理解することは、豊かな老後を迎えるための第一歩と言えるでしょう。公的な年金だけでなく、貯蓄やiDeCo、つみたてNISAといった自助努力による資産形成の重要性が、今後ますます高まっていくと考えられます。

参照:
総務省「家計調査年報(令和5年)」
厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」