神戸・高2殺害14年 苦悩語る父「息子の手は冷たかった」控訴審続く

昨年5月、兵庫県芦屋市にある警察学校で講演を行った堤敏さん(66)。2010年10月に神戸市北区の路上で、高校2年の息子、将太さん(当時16)を何者かに殺害された事件について語った。犯人逮捕に繋がる有力な情報がなく捜査が難航する中、堤さんたちは長年にわたりビラ配りなどを行い、情報提供を呼びかけた。事件から10年以上経た2021年、当時17歳だった男(32)が逮捕され、事件当時未成年であったことから少年法に基づき匿名で裁かれた一審で懲役18年の判決が出たが、男は控訴し、現在も大阪高裁で裁判が続いている。

警察学校で講演する、神戸市北区高校生殺害事件の被害者遺族である堤敏さん警察学校で講演する、神戸市北区高校生殺害事件の被害者遺族である堤敏さん

襲撃の瞬間と息子の最後の叫び

講演会で堤さんは、まず事件発生当時の現場状況を語った。「息子はその当時、仲が良かった女子生徒と2人で、家の近所、住宅街の中で2人並んで座って話をしているところを、刃物を持った犯人に突然襲われて、頭や首、肩、胸、背中など上半身を複数箇所刺されて殺害されました。刃物の先は肺にまで達していました。犯人は、息子に馬乗りになって刃物をふり上げていたと」。その後、将太さんは助けを求めながら現場付近を歩いていたという。「歩いている間に数回『助けて!助けて』と声を出しています。もう潰れた肺で呼吸もできない中、ふらつきながら、精一杯助けを求めて叫びながら歩いたんだなと」。

悲報を受け、現場へ駆け付けた父

敏さんは当時、将太さんの友人が自宅を訪れたことで事件を知ったという。「全くピンとこない。もう何を言っているのかわからない」。現場に駆けつけ息子を見たときも、「何これ、どうなってんの?」と全く現実感がなく、理解できなかったという。「夢でも見てるんと違うの」と思うほどだったと語る。敏さんが現場に駆け付けたのは深夜11時ごろ。まだ救急車も来ていない中で、将太さんは横断歩道の上に一人、救命措置もされずにうつ伏せで倒れていた。「何回も何回も『将太、将太』と名前を呼んで、その声がだんだん大きくなって、叫ぶようになっていました」。うつ伏せで倒れている息子の手を握ると、指先は冷たかったという。首筋を触ったときの感触や温かさは、「今でも私の手の中に残っています」と話し、当時の様子を鮮明に記憶していると語った。

現場の凄惨さと父の心情

現場付近には、事件の凄惨さを物語るかのように周辺に血痕が広がっていた。将太さんの左肩辺りから流れ出た血は、約1.5m~2mほど離れた場所にあるマンホールに向かって、幅1センチ~2センチほどで流れていたという。その光景を見た敏さんは、「徐々に血の気が引いていくというか、膝ががくがく震えてきて、内臓がぎゅーっと締め付けられるような、もう言いようのない感覚でした」と、言葉にできないほどの衝撃と苦痛を感じたことを明かした。

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