異世界ライトノベルの主人公は長らく10代の若者が定番だったが、ここ数年増え続けているのが「おっさん」の主人公たちだ。
【写真】世に多くいるイケオジと比べても「普通のおじさん」度がかなり高い45歳
現在アニメ放送中の「片田舎のおっさん、剣聖になる」も、45歳という年齢相応にくたびれた剣術師範の中年男性が、小さい頃に剣術を教えた弟子たちに引っ張り出され……というストーリーが展開されている。
今なぜおじさんなのか、そしてどんな人が書き、読んでいるのか。原作者の佐賀崎しげるさんに話を聞いた。
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――そもそも「おじさんを主人公にしよう」と思ったきっかけは何だったのでしょうか?
佐賀崎 いくつか理由がありますが、一番の根っこは僕の個人的な趣味です。もともと「師匠キャラ」が好きで、『るろうに剣心』の比古清十郎とか、師匠でありながら圧倒的に強くて、でも主役ではないという立ち位置のキャラクター。ああいう存在にずっと憧れていたんです。
――強い師匠、かっこいいですよね。
佐賀崎 比古清十郎の場合は強すぎて、彼が主役だと物語がすぐ終わってしまいそうなんですけどね(笑)。でも、その“師匠ポジション”を主人公に据えたらどんな物語が描けるんだろうと思ったのが出発点でした。
「読者としては若者の無双や悪人が逆襲されるのを楽しんでいたんですけど…」
――「おっさん剣聖」のベリルという主人公はどうやって生まれたんですか?
佐賀崎 おじさんを主人公にすることを決めたうえで、キャラクターは「弟子たち」から固めていきました。主人公の弟子には「若くして騎士団長に登り詰めた女剣士」や「国を代表する天才魔法使い」といった、普通なら物語の主役を張るキャラクターがごろごろいます。じゃあその人たちを「教える側」ってどういう人なんだろう、という逆算で考えていきました。
――連載が始まった2020年というとまさに異世界転生の全盛期ですよね。
佐賀崎 当時、「小説家になろう」などの投稿サイトで人気だったのは、若い主人公が異世界でチート能力を使って大活躍する……という展開でした。あとは「ざまぁ系」と言われる復讐ものですね。僕も読者としては若者の無双や悪人が逆襲されるのを楽しんでいたんですけど、「いまさら自分が後追いで似たものを書く意味があるのか?」と思ってしまったんですよね。