李在明氏、韓国大統領の重責:歴史的課題と厳しい船出

李在明氏は、1987年の民主化以降、金大中、盧武鉉、文在寅に続く4人目の民主党系韓国大統領です。韓国における政権交代はしばしば前政権の失敗による「反射利益」の性格を帯びますが、特に民主党政権は、保守政権による救済金融事件(金泳三)、大統領職罷免(朴槿恵、尹錫悦)といった前例のない巨大な失政の後に権力を握ってきました。李大統領は、「内乱の審判」という圧倒的な民意に後押しされ、1728万票余りという歴代最多得票で当選しました。12日に発表された全国指標調査(NBS)では、李大統領の政権発足1週目の国政遂行に対する支持率は53%に達し、尹錫悦前政権の同時期調査(48%)を5ポイント上回りました。「うまくやるだろう」との期待も65%を占めています。しかし、その前には「有能な民主党政権」を実現するという歴史的、かつ困難な課題が横たわっています。

民主党政権の歴史と李大統領の立ち位置

民主党系の歴代大統領の中で、最も「成功した大統領」と評されるのは金大中氏でしょう。彼は通貨危機の克服、民主主義・人権の伸張、南北関係改善といった業績を残しました。盧武鉉氏は政治改革や国家バランス発展、韓米FTAなどを信念をもって推進し、文在寅氏は朝鮮半島平和プロセス推進と新型コロナウイルス対応が業績に挙げられます。一方で、不動産価格の暴騰は、盧武鉉政権と文在寅政権に共通する「汚点」として記憶されています。第4代民主党系大統領となった李在明氏は、これらの前例を踏まえ、「有能な民主党政権」を樹立するという歴史的責務を負っています。

李在明韓国大統領、記者団との食事を終え大統領室を後に李在明韓国大統領、記者団との食事を終え大統領室を後に

圧倒的な民意と巨大与党という動力

李大統領は、内乱終息を望む多数の国民の支持と、170議席近い巨大与党という強力な国政運営の原動力を手にしました。最大野党の「国民の力」は、大統領選挙の敗北後、党の再整備もままならず、与党に対する牽制力が弱い状況です。これは、李大統領が政策を推進する上での追い風となり得ます。

李大統領を取り巻く厳しい現実

しかし、李大統領を取り巻く国内外の環境は非常に厳しいと言えます。就任初日に龍山執務室に出勤した際、職員もパソコンもプリンターもない状態を見て「まるで墓場のようだ」と表現したように、李大統領が引き継いだ状況は困難に満ちています。内需沈滞と輸出不振、トランプ氏再登板の可能性に伴う貿易・安全保障関連の圧力、政治・経済的二極化など、構造的な壁が高く立ちはだかっています。対北朝鮮ビラ散布と拡声器放送中止で始まった南北関係改善の試みも、米中露など周辺国の複雑な情勢と合わせて解決していかなければならない高難度の課題です。また、歴代最多得票ではあっても、非常戒厳事態という特殊な状況下でも得票率が過半数に及ばなかった点(49.42%)、革新・保守両陣営の得票を合わせれば「5対5」となる大統領選挙の結果は、李大統領と民主党にとって決して油断できない現実を示しています。悪条件の中でこそ、有能なリーダーシップが強く求められています。

国民が李大統領に望む「能力」と「実用」

韓国国民が李大統領に最も強く望んでいるのもまた、「能力」です。大統領選挙直後の世論調査では、国民が李大統領を選んだ理由として「内乱審判」と並んで「業務能力」を挙げています。最も期待する点は「庶民の暮らしの回復」であり、これは「尹錫悦政権に審判を下すと同時に、仕事ができる人物を選んだ」という民意を反映しています。李大統領自身も「実用」を前面に掲げ、「国民の皆さんが『李在明を選んでよかった』という効力感と自負を持てるよう、全力を尽くす」と述べています。

政権初期の重要な課題:人事と政策設計

政権初期の設定において最も重要な問題は、やはり「人事」です。これまで大統領室と内閣の人選は、能力・実用中心で行われているとされますが、国民の目には「破格」や「感動」を与えるような人物が見当たらないという指摘もあります。女性の起用が極めて少数であることも事実です。特に、公職綱紀、人事検証、検察改革を担うべき民情首席という重要なポストに、借名不動産保有の前歴がある人物が起用された点は、政権にとって大きな負担要因となりかねません。外交安保ラインにおいて、「自主派」と「同盟派」の意見の相違が、抑制と均衡ではなく対立の火種となるようなら、今後深刻な問題を引き起こす可能性があります。歴代大統領が、相次ぐ閣僚候補の辞退で政権初期に危機を迎えた経験を、反面教師として活かす必要があります。

国政課題や改革作業の緩急、強弱の調節もまた、任期初期のデザインが極めて重要です。政権引き継ぎ委員会に相当する国政企画委員会が来週発足し、政策の優先順位と実行戦略を具体的に策定する予定です。短期間での急速な成果を追求し、深刻な社会対立や副作用を招いた前政権の失敗を教訓としなければなりません。内乱、金建希(キム・ゴンヒ)夫人疑惑、C上等兵死亡事件を巡る3大特検など、「患部」を正確かつ迅速に取り除くためには、「有能さ」を最大限に発揮する必要があります。

李在明韓国大統領の就任初期の様子李在明韓国大統領の就任初期の様子

有能な民主政権への道と政権再創出の可能性

政権の成功は、国民生活を向上させ、国家競争力を高めることにかかっています。政治的には、最終的に与党が次期政権に権力を引き継げるか否かで判断されます。これまで3人の民主党大統領のうち、政権再創出に成功して退任したのは金大中大統領のみです。李在明大統領もまた、「有能な民主政権」を率いて5年後に政権再創出を成し遂げることができるでしょうか。この重い課題が、彼の肩にのしかかっています。

参考文献

出典:ハンギョレ(ヤフーニュース経由)