新しいリーダーが陥りがちな落とし穴:チームの空気を悪くする「上司口調」の危険性

「この本のおかげで出世できた」「チームのパフォーマンスが上がった」と多くのビジネスパーソンから支持を集める、マネジメント法「識学」に基づいた書籍シリーズがあります。著者の安藤広大氏が提唱する、ビジネス現場で長く活躍するためのメソッドや思考法は、4400社以上での導入実績を持ち、様々な業界で注目されています。今回は、全ビジネスパーソンに不可欠なリーダーシップの発揮方法について、安藤氏の知見をもとに解説します。

出世でなぜチームの空気が悪くなる?

リーダーが変わった途端、「なんとなく職場の雰囲気がギスギスし始めた」と感じた経験はないでしょうか。これは、新しいリーダーが就任直後に無意識にとってしまいがちな、ある言動が原因で起こることが多いのです。チームの空気を一気に冷やすその言動とは何でしょうか。

避けたい「急な上司口調」

職場の空気を悪くするリーダーのワースト1は、役職に就いた途端に偉そうな態度をとる人です。リーダーになった瞬間、これまでのフラットな関係性から急に、

  • 言葉遣いが上から目線になる
  • 態度がよそよそしく、固くなる
  • 不必要に部下との距離を縮めようとする

といった変化が見られます。これは本人としては、「リーダーとしての責任を果たそう」「部下になめられてはいけない」という意識からくる行動かもしれません。しかし、周囲のメンバーから見れば、それは単なる「変貌」にしか映りません。

新しいリーダーがチームの雰囲気改善を検討するビジネスシーン新しいリーダーがチームの雰囲気改善を検討するビジネスシーン

リーダーシップは「偉さ」ではなく「軸」

新しいリーダーが就任して最初の数週間は、部下にとって「この人は信頼できるリーダーか?」と品定めする重要な期間です。この時期に「急に態度を変えた人」は、信頼を大きく損ないます。部下がリーダーに求めるのは、一方的な上からの指示ではなく、一貫性のある公平な判断軸です。部下は、「このリーダーの判断は公平だ」「言っていることがブレない」と感じたときに初めて、「この人についていこう」という気持ちになるのです。

変えるべきは態度ではなく「視点」

リーダーになった瞬間に変えるべきなのは、言葉遣いや表面的な態度ではありません。最も重要なのは、「視点」を変えることです。リーダーは、個人の視点から「全体」「長期」「責任」といった、より広く、将来を見据えた視点を持つ必要があります。そして、この視点の変化に基づいた判断や意図を、言葉にして部下に丁寧に伝えること。それが、チームの空気を悪くすることなく、真のリーダーシップを発揮するための秘訣です。

結論

新しいリーダーがチームの雰囲気を悪化させる最大の要因は、役職についたことで「態度」や「言葉遣い」だけを急に変えてしまうことにあります。リーダーシップの核は、表層的な「偉さ」を示すことではなく、公平で一貫性のある「軸」を持つことです。そして、その軸は「全体」「長期」「責任」といった、より高い視点から生まれます。態度ではなく、この「視点」を変え、それを部下に丁寧に伝えることこそが、チームからの信頼を得て、良い雰囲気を作りながら成果を出すための鍵となります。

参考文献

安藤広大 著 『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』『パーフェクトな意思決定』シリーズ (ダイヤモンド社)