パッソセッテが大爆死したのはナゼ? シエンタ後継だったのにエコカー減税に適合できず消えていったミニバンを振り返る

2008年12月、トヨタはコンパクトな7人乗りミニバンとして「パッソセッテ」を市場に投入しました。既存のコンパクトハッチバック「パッソ」をベースとし、150万円を切るスタート価格設定は、多くのユーザーに受け入れられる可能性を秘めていると見られていました。しかし、その期待とは裏腹に、パッソセッテの販売は極めて低迷し、「大爆死」と称されるほどの結果に終わります。結局、大きな改良が施されることもなく、わずか3年3ヶ月という短いモデルライフで姿を消すこととなりました。このモデルがなぜ成功できなかったのか、その背景には何があったのでしょうか。

パッソセッテの登場とシエンタとの関係

パッソセッテは、普段は3列目シートを格納して5人乗りのハッチバックとして使用し、必要に応じて7人まで乗車できるというコンセプトで設計されました。これは、ファミリー層を中心に魅力的なパッケージングと考えられました。ベースとなったパッソと比較して、ホイールベースは310mmも延長されており、広い室内空間が確保されていました。また、多人数乗車時の動力性能を考慮し、パッソには設定のない1.5Lエンジンが搭載された点も特徴です。登場当初、パッソセッテはすでに販売されていた初代シエンタの後継モデルとして位置づけられ、しばらくは併売されていましたが、2010年夏にはシエンタが一時的に販売を終了しています。パッソセッテはシエンタの役割を引き継ぐはずでした。

トヨタ パッソセッテ。コンパクトな7人乗りミニバンとして登場したが、販売は低迷した。トヨタ パッソセッテ。コンパクトな7人乗りミニバンとして登場したが、販売は低迷した。

販売不振の要因:ハード面の課題と最大の誤算

しかし、パッソセッテの販売は予想をはるかに下回る低迷を続けました。これにはいくつかの要因が考えられます。シエンタが備えていたスライドドアがなく、通常のヒンジドアだった点や、内外装の質感がややチープに感じられた点など、ハード面での課題も少なからず影響したと言われています。しかし、これらの点以上に、パッソセッテの販売を決定的に落ち込ませた最大の要因は、デビュー後に本格化した「エコカー減税」に一切適合しなかったことでした。販売不振を受け、初代シエンタは2011年5月に改良されてまさかの復活を遂げます。一方、パッソセッテは2012年3月には終売となり、明暗が分かれました。

エコカー減税が招いた予期せぬ結果

当時導入されたエコカー減税は、燃費性能や環境性能に優れた自動車に対して、自動車重量税や自動車取得税の大幅な減税、あるいは免税措置が講じられ、さらに補助金の交付も行われるという強力な政策でした。これにより、対象となるエコカーは実質的な購入価格が大きく下がり、消費者にとって非常に魅力的な選択肢となりました。税制優遇の対象外であったパッソセッテは、エコカー減税の恩恵を受けられる競合車種と比較して、価格面でのアドバンテージが薄れてしまい、ユーザーの購買意欲を刺激できませんでした。真面目に作られたコンパクトミニバンであったパッソセッテですが、市場の大きな流れであるエコカー減税に対応できなかったことが、その短命に繋がった最大の理由と言えるでしょう。もし生まれるタイミングがもう少しずれていれば、その評価や販売結果は全く異なるものになっていた可能性も否定できません。