イスラエル攻撃によるイラン核・軍事施設への被害、衛星写真が示す実態

イスラエルは6月13日、イランの核施設および主要軍事施設に対して先制攻撃を実施しました。この攻撃による被害の詳細は注目されており、特に衛星写真による分析が進められています。複数の衛星映像会社が撮影した画像を基にした報告からは、イラン国内の複数の地点で施設への損傷が確認されています。この記事では、最新の衛星画像分析と国際機関の報告に基づき、イスラエルによる攻撃がイランの施設に与えた影響について詳述します。

衛星写真が示す核施設への被害

英国BBCは6月15日、衛星映像会社マクサー・テクノロジーズおよびアンブラスペースなどが撮影した衛星写真を引用し、13日のイスラエル空襲で被害を受けたイランの核施設の様子を報じました。これには、イランの核開発の核心拠点とされるナタンズおよびイスファハーンの核施設が損傷した様子が写っていたとされます。

科学国際安全保障研究所(ISIS)の分析によると、ナタンズでは試験燃料濃縮施設および電気変電所が被害を受けたとされています。国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシー事務局長も同日、国連安全保障理事会で、ウラン235を60%まで濃縮していた燃料濃縮試験施設(PFEP)の地上部分が破壊されたことを明らかにしました。ただし、地下施設に対する物理的攻撃の証拠はないと強調しました。BBCは、地下施設攻撃にも使われるいわゆる「バンカーバスター(地中貫通爆弾)」使用の可能性も提起しました。イスラエルは過去にガザ地区やレバノンの地下施設攻撃でバンカーバスターを使用したことがあります。

マクサーの衛星写真には、イスファハーン核施設の一部の構造物が破壊された様子も写っており、特に左上と右下で爆撃の跡が捉えられ、周辺ですすの跡が観測されました。IAEAはこれに先立ち、イスファハーン内のウラン変換施設や燃料板製造工場など主要建物4カ所が破壊されたと明らかにしており、BBCは衛星写真でも少なくとも2つの構造物に目に見える損傷が現れたと伝えています。

一方、マクサーが提供したアラク重水炉およびフォルド濃縮施設の写真では、これといった被害の痕跡は発見されませんでした。これに先立ち、イランのマスコミはフォルド核団地がイスラエルの標的になったと報じていましたが、イスラエル国防軍(IDF)はこれを否定しています。

イラン軍事施設への攻撃と被害

イスラエル攻撃後のイラン・タブリーズ近郊軍事施設から立ち上る煙を示す衛星写真イスラエル攻撃後のイラン・タブリーズ近郊軍事施設から立ち上る煙を示す衛星写真

アンブラスペース社の衛星イメージからは、イラン北西部タブリーズ付近のミサイル複合施設数カ所が損傷したことが確認されました。同社は地理空間情報専門家の分析を基に、該当被害施設には兵器保管区域、ミサイル格納庫、サイロなどが含まれていると説明しています。

プラネットラボが撮影した低解像度映像でも、ケルマンシャー州のミサイル基地周辺に広範にわたる炎の跡と建物の被害が確認されています。テヘラン近隣のイスラム革命防衛隊ガーディル弾道ミサイル基地内の構造物の一部もひどく破損した場面がマクサーの写真に写っていました。また、西アゼルバイジャン州ピランシャールに位置する革命防衛隊のレーダー基地も相当部分破壊されたものと分析されています。

まとめ

イスラエルによる6月13日の攻撃では、衛星写真や国際機関の報告により、イランのナタンズおよびイスファハーンの核関連施設の一部地上部分と、タブリーズ、ケルマンシャー、テヘラン近郊、ピランシャールなどの複数の軍事施設に損傷があったことが確認されました。特にナタンズのPFEP地上施設や複数の軍事施設の被害は比較的広範に及んでいると見られます。しかし、ナタンズの地下施設やフォルド核施設など、一部の重要施設では明確な被害痕跡が確認されておらず、被害の全容や特に核プログラムへの長期的な影響については不確実性が残ります。今後の詳細な分析や報告が待たれます。

参照元

  • 英国BBC
  • マクサー・テクノロジーズ
  • アンブラスペース
  • プラネットラボ
  • 科学国際安全保障研究所(ISIS)
  • 国際原子力機関(IAEA)
  • ロイター
  • Yahoo News Japan (記事配信元)