【パリ=三井美奈】ドイツとフランスが、米国主導の北大西洋条約機構(NATO)をめぐり、亀裂を深めている。フランスが欧州独自の安全保障を訴える一方、ドイツはNATOを安保の主軸と位置付ける。欧州を牽引(けんいん)する両国は、もはや溝を隠そうともしない。
創設70年を迎えるNATOは来月3、4日、ロンドンで首脳会議を行う予定。会議を前にマクロン仏大統領は28日、訪仏したストルテンベルグNATO事務総長と記者会見を行い、NATOの見直しを主張した。
「NATO創設時はソ連が脅威だったが、時代は変わった。今の敵はだれなのか。はっきりさせるべきだ」と主張。米露による中距離核戦力(INF)全廃条約の失効を受け、新たな仕組みには「欧州を関与させるべきだ」とも述べた。
さらに「過去2年間の首脳会議は、米国の負担軽減だけを論議した。欧州の平和や対露関係などの諸問題が解決するまで、費用負担の交渉はしない」と、トランプ米大統領への不満を示した。マクロン氏は今月初め、英誌エコノミストで「NATOは脳死状態」と発言し、欧州に依存脱却を求めた。
一方、メルケル独首相は27日、独連邦議会(下院)での演説で、NATOを「平和の防塁」と位置付けた。トランプ氏の要求に応じ、「2030年までに国防費を国内総生産(GDP)の2%にする」と述べた。