国民民主党の候補者擁立問題、支持率低下の背景にある不透明な意思決定とは

「対決より解決」。このスローガンを掲げ、支持を拡大してきた国民民主党が、夏の参議院選挙に向けた候補者擁立を巡る騒動により、急速な支持者離れに直面している。この問題は、単なる候補者の選定にとどまらず、党のガバナンスや存在意義そのものに疑問を投げかける事態へと発展している。特に、不透明な意思決定プロセス、党による自らの発言への無責任な対応、そして候補者擁立に対する説明不足が浮き彫りとなっている。

国民民主党の候補者擁立と不透明なプロセス

2025年5月14日、国民民主党は突如として、元衆院議員の山尾志桜里氏(本名・菅野氏)や前参院議員の須藤元気氏ら、経験者4人を参院選比例代表に擁立すると発表した。この発表直後から、SNS(X)上では党に対する大きな疑問、失望、批判の声が多数上がり、党の意思決定プロセスの説明や、山尾氏、須藤氏の公認・擁立撤回を求める意見が多く見られた。

25年5月14日から19日にかけて「国民民主」を含む5万3722件のポストを分析した東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授は、「候補者擁立という観点から行くと須藤元気氏の擁立が国民民主党支持者の支持率を下げる効果が大きかった可能性がある」と指摘している。

須藤氏は、過去にワクチン接種に対する疑問を呈する発言を繰り返してきたことが批判の対象となった。同氏は「子どもへのワクチン接種とワクチン後遺症を考える超党派議員連盟」に参加し、2022年9月には立憲民主党の川田龍平議員、参政党の神谷宗幣議員らと共に、5〜11歳の子どもへのワクチン接種推奨(「努力義務」)の撤回を求める提言を厚生労働省に提出していた。こうした情報発信は、候補者擁立が発表される前月の4月5日にも確認されている。

国民民主党からの公認が発表された5月14日、須藤氏は自身のSNS(X)上で、「ワクチンなど医療分野について『副反応への懸念』を発信していましたが、ワクチンの重症化予防効果等を含めて科学的根拠を否定する立場ではありません。党の『科学的知見と透明性重視』の方針に従います。その決意の証として、国民民主党から提示された確認書にサインして、党に提出しました。党として決定した事項に反する行動は取りません」と釈明とも取れる発信を行った。

国民民主党の山尾志桜里元衆院議員。参院選比例代表への擁立発表後、党の候補者選定プロセスに疑問の声があがった。国民民主党の山尾志桜里元衆院議員。参院選比例代表への擁立発表後、党の候補者選定プロセスに疑問の声があがった。

一連の経緯は、党の候補者選定における透明性の欠如、過去の言動と党の方針との整合性に対する詰めが甘かったこと、そして党が支持者や世論に対して十分な説明責任を果たしていない実態を露呈した形となった。

結論:信頼回復への課題

国民民主党が今回直面した候補者擁立を巡る騒動は、「対決より解決」というスローガンとは裏腹に、党内部のガバナンスや意思決定のあり方に深刻な課題を突きつけた。特に、事前の説明なく突如として行われた発表、過去の党方針と相容れない発言を繰り返していた候補者の擁立、そしてそれに対する党の説明不足は、多くの支持者からの信頼を損なう結果となった。今後、党が失われた信頼を回復し、再び支持を広げていくためには、意思決定プロセスの透明化、候補者選定における明確な基準設定と説明、そして党内外に対する責任あるコミュニケーションが不可欠となるだろう。

参考資料:
https://news.yahoo.co.jp/articles/0457292e37f5acfafd0f99d84cf2c9483ab5c2d8