成田空港C滑走路拡張巡る訴訟でNAA側勝訴 千葉地裁が判断示すも課題山積

成田国際空港会社(NAA)が成田空港の拡張予定地内に存在する建物などの撤去と土地の明け渡しを求め、空港反対派らを相手取った訴訟で、千葉地裁(斉藤顕裁判長)は16日、NAAの請求を認める判決を言い渡しました。ただし、NAAが求めていた強制執行を可能とする仮執行の申し立てについては認めませんでした。これに対し、反対派は控訴する方針を示しています。

訴訟の背景と争点

今回の訴訟でNAAが明け渡しと撤去を求めたのは、建設が進むC滑走路とターミナル地区を結ぶ誘導路の計画区域にあたる千葉県芝山町香山新田の土地です。この土地には「三里塚・芝山連合空港反対同盟旧熱田派」の小屋などが建っており、「横堀農業研修センター」などとして使用されてきました。土地の大部分はNAAが所有していますが、一部については同派の代表世話人である柳川秀夫さん(77)ら4人が、反対運動のために「一坪共有地」として所有していました。

NAA側は、これらの小屋は無断で建設されたものであると指摘し、当該土地の取得は空港建設を進める上で必要不可欠であると主張しました。一方、反対派側は、新滑走路の建設自体に必要性はないと反論し、一坪共有地を使用しなくても建設は可能であると訴えました。また、1990年代にNAAの前身である新東京国際空港公団が「あらゆる意味で強制的手段は取らないと公約している」とし、これは信義則に反するとしてNAAの請求を退けるよう求めていました。

千葉地裁の判断

判決において斉藤裁判長は、「強制的手段」という公約は、土地収用法に基づく収用手続きを想定したものと解釈しました。その上で、旧公団が民事訴訟手続きによる権利の実現を行わないと表明したとは認められないと判断しました。一坪共有地に関しては、NAAがほとんどの持ち分を所有しており、C滑走路の建設にも合理的な理由が存在することから、NAAが単独で土地を取得するのが相当であるとの結論を示しました。これにより、NAAの土地明け渡しおよび建物撤去請求を認める判決となりました。

成田空港のC滑走路拡張予定地内にある、訴訟対象の横堀農業研修センターと土地成田空港のC滑走路拡張予定地内にある、訴訟対象の横堀農業研修センターと土地

判決への反応と今後の展望

閉廷後、柳川さんは千葉市内で開かれた集会で、今回の判決を「一方的に押し切るやり方は時代遅れだ」と強く批判しました。一方、NAAは田村明比古社長の談話を発表し、「機能強化の実現に向け、本判決の意義は大きい」との認識を示しました。

今回の判決は、滑走路の新増設を柱とする拡張計画を進めるNAAにとって、一定の一歩前進と言えます。しかしながら、今後も用地買収は難航が予想されており、目標とする2029年3月のC滑走路運用開始を予定通り実現できるかは依然として不透明な状況です。

成田空港の拡張計画では、空港用地を現在の1198ヘクタールから2297ヘクタールへとほぼ倍増させる計画です。新たな用地の約7割近くが民有地であり、移転対象は約200戸、総地権者数は少なくとも約1600人に上るとされています。NAAは計画が国に許可された2020年1月以降、約200人体制(今年3月時点)で用地買収を進めていますが、民有地の確保率は3月末時点で74%にとどまっています。

さらに、未買収地は現在の空港用地内にも11カ所、合計2.9ヘクタール残されています。これらの土地の買収も進まなければ、2030年代前半から段階的に旅客施設を新たなビルに集約する「ワンターミナル構想」にも支障が出る可能性があります。

国は1993年に土地収用法に基づく強制収用を放棄しており、現在は民事訴訟による明け渡し請求手続きが進められています。しかし、こうした訴訟は長期化する傾向にあり、計画全体の見直しを迫られる可能性も指摘されています。今回の判決は一つの節目ですが、成田空港の拡張には依然として多くの課題が残されています。

参考文献