2024年6月10日、通常国会の会期末を迎えたその日、衆院議員会館で開かれた記者会見が、一人の元議員の選挙出馬を巡る騒動に改めて光を当てました。かつて衆議院議員を務めた山尾志桜里氏(本名・菅野氏)の参院選比例代表候補としての公認内定が、国民民主党内で大きな波紋を呼び、党の支持率にも影響を与えた一連の出来事です。政治とメディアの深層を長年見つめてきた専門家の見解を交え、この問題を深く読み解きます。
国民民主党の公認内定と予期せぬ批判の殺到
騒動の発端は、5月14日に国民民主党が開いた両院議員総会で、今夏の参院選比例代表候補として山尾氏を含む4人の公認を内定したと発表したことでした。この発表に対し、直後からSNSを中心に激しい批判の声が殺到しました。
かつて「視力検査並み」と揶揄されるほど低迷していた国民民主党の政党支持率は、昨秋の衆院選以降、野党第一党である立憲民主党を上回る時期もあり、上昇傾向にありました。しかし、山尾氏の公認内定が報じられると、その支持率は急落に転じます。
支持率への明確な打撃:世論調査の数値が示す影響
山尾氏の公認問題が表面化して以降、各種世論調査で国民民主党の支持率低下が確認されました。
- NHKの6月世論調査: 5.4%を記録。前回(5月9~11日実施)の7.2%から1.8ポイント低下しました。
- ANN(テレビ朝日系)の調査: 7.5%となり、前回(同月10~11日実施)の11.7%から4.2ポイントと大幅にダウンしました。
- JNN(TBS系)の調査: こちらでも前回から3.4ポイントの低下が見られました。
これらの数値は、山尾氏の公認内定が党のイメージにネガティブな影響を与え、具体的な支持離れにつながったことを示唆しています。
会見開催への圧力と玉木代表の苦慮
毎週火曜日に行われる国民民主党の玉木雄一郎代表の定例記者会見では、記者団から「山尾氏自身の口から説明を行うべきではないか」「会見を開くべきではないか」といった質問が繰り返し投げかけられました。これは、党としてこの問題への対応や説明責任を果たすよう求める外部からの強い圧力を示すものでした。このような状況を経て、ようやく6月10日に山尾氏の記者会見がセッティングされる運びとなりました。
専門家が見る「すべてを失ったアニー」の再来
政治、経済、社会の深層に鋭く斬り込む総合情報誌『FACTA』編集長の宮嶋巌氏は、一連の騒動、特に山尾氏の状況について言及しました。宮嶋氏は、「今度こそ、すべてを失ったアニーではないでしょうか」と嘆息交じりに語っています。この言葉は、過去の出来事や今回の公認見送り騒動を経て、山尾氏が政治的な立場や信頼を再び大きく損なった、という宮嶋氏の厳しい認識を示唆しています。
サンデー毎日 2024年6月29日号 表紙 国民民主党 参院選 報道関連
今回の山尾氏を巡る騒動とそれに続く公認見送りは、国民民主党が積み上げてきた支持回復の流れに冷や水を浴びせるとともに、改めて政治家の過去や資質、そしてそれに対する世論の厳しい目が、選挙における公認や党のイメージ形成に決定的な影響を与えうる現実を浮き彫りにしました。
まとめ
山尾志桜里氏の参院選比例代表候補としての国民民主党公認内定は、過去の問題が蒸し返される形で激しい批判に晒され、結果として党の支持率を大きく低下させる事態を招きました。玉木代表への会見開催要求など、党は対応に追われ、最終的に公認見送りの経緯説明のために山尾氏の会見が開催されました。この一連の出来事は、特定の政治家を巡る問題が政党全体に及ぼす影響の大きさを改めて示し、専門家からは「すべてを失ったアニー」と評されるほどの厳しい局面となりました。夏の参院選に向けて、国民民主党はこの波紋を乗り越え、失った信頼と支持を回復できるかが問われています。