エアバスがパリエアショーで大型受注を相次ぎ獲得、ボーイングは事故の余波に直面

最近インドで発生したボーイング旅客機の墜落事故が業界に波紋を広げる中、欧州の航空機メーカーであるエアバスが大規模な新規受注を立て続けに確保し、「反射利益」を得ている状況だ。これは、国際的な航空宇宙博覧会であるパリエアショーの開催と、地政学的な要因が複合的に影響していると見られている。

第55回パリエアショーにて、大規模な新規受注を獲得したエアバスのA350-900型機(エミレーツ航空)が展示されている様子第55回パリエアショーにて、大規模な新規受注を獲得したエアバスのA350-900型機(エミレーツ航空)が展示されている様子

パリエアショーで具体的な契約を締結

エアバスは16日(現地時間)、フランスのパリ近郊で開幕した第55回パリエアショーの初日に、複数の航空会社やリース会社との間で大型契約を締結したことを発表した。

サウジアラビアの航空機リース会社アビリースとは、「A320neo」30機、「A350貨物機」10機を含む合計70億ユーロ(約1兆1700億円)規模の契約を結んだ。この契約は、今後「A320neo」55機、「A350貨物機」22機まで拡大する可能性があるとされている。

また、サウジ国営のリヤド航空も、大型旅客機「A350-1000」25機を注文した。この機種はサウジアラビア国内では初めて導入されることになり、こちらもさらに25機が追加される可能性があるという。

さらに、これまで米国のボーイング機やブラジルのエンブラエル機を運航してきたポーランドのLOT航空も、初めてエアバス機との契約に踏み切った。「A220航空機」40機を発注しており、最終的には最大84機まで契約が拡大する可能性があると報じられている。

中国からの大規模受注観測と地政学

エアバスは、中国の航空会社からも強い関心を集めている状況だ。ブルームバーグ通信は4日、中国の航空会社が最大500機ものエアバス航空機の発注を検討していると伝えた。もしこれが実現すれば、中国による過去最大の航空機購入規模となる見込みだ。

この動きについては、一部では中国の習近平国家主席が、フランスのマクロン大統領やドイツのメルツ首相ら欧州の指導者の7月の訪中を控えて、「友軍確保」を目的としたメッセージであるという解釈が出ている。フランスとドイツ政府は、エアバスの主要株主だからだ。

また、「関税戦争」を宣言した米国のトランプ大統領へのメッセージであるという見方もある。ブルームバーグは、交渉がまとまれば、エアバスは米国との関税戦争以降、中国市場で不利な立場に置かれていたボーイングよりも確実に優位に立つだろうと指摘している。実際、中国は今年4月、自国の航空会社に対してボーイング機の引き渡しに応じないよう指示を出し、一部の航空機は塗装を終えた後に米国に戻されたケースもあった。しかし、先月のスイス・ジュネーブでの米中第一次合意に基づき「90日間の休戦」期間に入ったことで、今月から納品が再開されると伝えられている。

ボーイングの対応と今後の展望

一方、インドでの墜落事故以降、ボーイングは事故の余波を最小限に抑え、既存の顧客に対する支援に注力する姿勢を見せている。ボーイング側はAFP通信に対し、今回の博覧会期間中は新規注文の発表よりも顧客支援に集中することを伝えるなど、当面は信頼回復と既存顧客への対応を優先する戦略をとっているようだ。

今回のパリエアショーでのエアバスの大型受注は、直近のボーイング機の事故や米中間の地政学的な対立といった複数の要因が複合的に影響した結果と言える。エアバスは勢いを増す一方で、ボーイングは事故からの立ち直りと市場での信頼回復が喫緊の課題となっている。

(主要参考情報:聯合ニュース、EPA、ブルームバーグ通信、AFP通信など)