「推薦入試組の方が成績が良い」難関大学で進む異変。少子化が変える大学受験

大学入試において、推薦入試の重要性が増しています。特に、総合型選抜や指定校推薦といった方式に大学側が注力する背景には何があるのでしょうか。そして、「将来的にはすべての大学入試が推薦になる」という予測まである中、なぜ難関大学でさえ推薦組の学生の入学後の成績が良いという声が上がるのでしょうか。この記事では、少子化が引き起こす大学の変化と、推薦入試の知られざる実態に迫ります。

少子化が変える大学の現実

少子化は予想をはるかに超えるペースで加速しています。国立社会保障・人口問題研究所の予測よりも早く、出生数は80万人、さらには70万人を割り込みました。この急激な学生数減少は、多くの大学にとって学生確保を困難にしています。かつては定員の1.3倍の入学者を抱えていた京都ノートルダム女子大学が、わずか数年で募集停止に追い込まれたことは、この危機的な状況を象徴しています。

学生が減ると、一般選抜だけでは質の高い学生を十分に集めることが難しくなります。結果として、推薦入試、特に一定の評定平均値や勤勉さを備えた学生を受け入れる方式が、大学にとって安定的に学生を確保し、教育水準を維持するための重要な手段となるのです。これは、いわゆる「ボーダーフリー」の大学だけでなく、中堅規模の大学にも当てはまります。

難関大学における「推薦組優秀説」の真偽

しかし、推薦入試の注目は、学生確保に苦戦する大学だけの話ではありません。国内屈指の難易度を誇る難関大学においても、「推薦入試で入学した学生の方が、一般選抜組よりも入学後の学業成績が良い」という現象がしばしば報告されています。これは、従来の「推薦=学力が低い学生が入る」というイメージとは異なる、新たな大学入試の実態を示しています。

例えば、旧帝大の一角である東北大学では、2012年度以降、総合型選抜(旧AO入試)での入学者のGPA(大学での成績)が高い傾向が継続しています。滝澤博胤副学長は「AO入学者のGPAが高いのはどの年度も変わりません」と述べています。東北大学の総合型選抜は「学力重視」を掲げ、独自の筆記試験や出願要件としての評定平均値を重視します。これにより、基礎学力があり、入学後も地道に努力を続けられる勤勉な学生が入学していると考えられます。

東北大学の建物。総合型選抜を重視し、学力重視の推薦入試で高い実績を上げている日本の難関国立大学。東北大学の建物。総合型選抜を重視し、学力重視の推薦入試で高い実績を上げている日本の難関国立大学。

都内の難関私立大学である早稲田大学でも同様の傾向が見られます。恩藏直人常任理事は、総合型選抜(AO入試)や指定校推薦で入学した学生のGPAは、全体的に高いとコメントしています。早稲田の総合型選抜も、英語の筆記試験や共通テスト、評定平均値などを評価対象としています。受験する学部への強い志望動機と入学後の目的意識が明確であること、そして選抜過程で学力が問われることが、彼らの入学後の好成績に繋がっているのでしょう。

実際に、都内の私立中高一貫校出身のある学生は、「同じ高校から早稲田の国際教養の総合型選抜を受けた生徒は皆、英検準一級以上で成績が良い子たちでした。一般選抜で合格した友人もいますが、高校の先生も総合型選抜の方が難しいと話していました」と語り、難関大の総合型選抜が単なる「推薦」ではなく、高いハードルであることを示唆しています。

少子化という社会構造の変化は、大学入試のあり方を大きく変えつつあります。学生確保という喫緊の課題から始まった推薦入試へのシフトは、難関大学においては、独自の厳格な選抜基準(学力試験、評定平均値など)を設けることで、一般選抜組に匹敵、あるいはそれ以上の学力と意欲を持った学生を選抜する手段となり得ることが示されています。推薦入試、特に学力重視の総合型選抜は、これからの大学受験を考える上で無視できない道となるでしょう。

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