ドラゴン桜2で学ぶ「暗黙知」とは? 無意識の知識の力と注意点

受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生が教育論を展開する本連載。今回は、数学の学習にも関連する「暗黙知」という概念に焦点を当てます。無意識のうちに身についている知識や技能とは一体何なのでしょうか? その定義と、学習におけるその役割、そして注意すべき点について詳しく見ていきます。

「暗黙知」とは何か?

「暗黙知」とは、ハンガリーの哲学者マイケル=ポランニーによって提唱された概念で、「言語化することは難しいが、個人が経験を通じて習得している知識や技能」を指します。自転車に乗るスキルや、人の顔を見分ける能力、声で知人を判別するといった日常的な例がこれに当たります。

計算における「数の暗黙知」

桜木建二が解説するように、数の計算にも同様の「暗黙知」が関わってきます。たとえば、「7+8=15」を計算する際、頭の中でどのようなプロセスをたどるかは人それぞれです。筆者の場合、「8という数字の上に逆さまの7が降りてきて、8を潰して10になり、余った5と合わさって15になる」といった独特のイメージがあります。他の同級生の方法のように、言葉では説明しにくい感覚や手順が無意識のうちに使われているのです。

ドラゴン桜2の桜木建二が数の計算における暗黙知を解説する場面ドラゴン桜2の桜木建二が数の計算における暗黙知を解説する場面

暗黙知形成の重要性と落とし穴

このように、個別の感覚や手順は異なれど、重要なのは「言葉で説明することなく、自然とその行為が遂行できるレベルに達していること」です。九九を暗唱することで「数の暗黙知」を形成するのも、まさにこのためです。筆者も幼い頃に九九の歌を聞いて自然と覚えました。

しかし、暗黙知には危険性も潜んでいます。もし最初に誤った知識(例:「7×6=43」)を無意識に身につけてしまうと、それを後から修正するのは非常に困難になります。これは、言葉の音位転換(例:「とうもろこし」を「とうもころし」、「雰囲気」を「ふいんき」と言い間違うこと)にも似ています。無意識のうちに定着した誤りを訂正するには、意識的な修正が必要です。

「暗黙知」は確かに便利な道具であり、多くの技能や知識の習得に不可欠です。しかし、その基盤となる情報が最初から誤っていた場合、後々の学習や行動に大きな支障をきたす可能性があります。正確な知識や方法をしっかりと学び、それが無意識で使える「暗黙知」となるよう促すことが、質の高い学習に不可欠です。

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