農林水産省による大規模な備蓄米の放出、特に古古米や古古古米といった古い年度産の米が市場に出回るようになり、大きな注目を集めています。小泉進次郎農水相肝いりのこの「緊急事態」対応は、一般の消費者が購入するブランド米の価格や供給にどのような影響をもたらしているのでしょうか。都内のスーパーや米穀店での取材から、現在の米価市場の動向を探ります。
備蓄米放出後の市場の現状
スーパーやコンビニで2022年度産の古古米や2021年度産の古古古米が出回るようになり、それに伴って一時市場から姿を消していた2024年度産のブランド米が店頭に並ぶようになったという報道が一部で見られます。実際の小売現場では、この備蓄米流通がどのような影響を与えているのでしょうか。
小売現場の声：都内スーパーの証言
品川区にある大手スーパーの米売り場では、棚の7〜8割を備蓄米が占めていました。しかし、その中に「あきたこまち」や「ゆめぴりか」といったブランド米も確認できます。この店舗の担当者は、5キロあたりの米価について次のように語りました。
古古米（「進次郎米」）の驚異的な売れ行き
「古古米についてはすごい売れ行きです。入ってくる個数もその時々によって違うのですが、価格は2000円台（5キロあたり）で、店頭に並べると1時間もたずに売り切れます。『テレビで観た古古米が食べたい』と買いにくるお客さんも多いんですよ。何か話のネタにもなるしとかそんな感じなんですかね。ウチの場合は古古米が入ってきても、24年度産がまったく売れなくなるということはないです」
江藤前大臣時代の備蓄米は不人気
いっぽうで、江藤拓前大臣時代に放出された備蓄米は不人気のようです。
「ウチで一番残っているのは、最初に放出されたほうの備蓄米ですね。こちらは無洗米で税込3777円（5キロ）で、無洗米でなければ100円安くなりますが、すぐ売り切れるということはありません。24年度産とほぼ価格が変わらないこともあってか、一番売れずに在庫が残ってますね」
価格が古古米よりも高く、24年度産との差が小さいことが、売れ行きの差に繋がっているようです。
ブランド米の動向
24年度産のブランド米の供給について尋ねると、担当者は「24年度産が急に店頭に並んだかって？それはありません。あくまで前もって仕入れた数量が入ってきているだけです。この『あきたこまち』や『ゆめぴりか』は今日入荷したのでたくさん並んでますけど、明日にはもうなくなっていると思います」と語りました。無洗米のあきたこまちは税込4479円、ゆめぴりかは税込4911円（いずれも5キロあたり）で、依然として高い米価ですが、品薄というよりは定期的な入荷がある状況のようです。
小売現場の声：チェーン展開スーパーの証言
東京、埼玉、千葉、茨城の一都三県で展開する、あるスーパーの練馬区にある店舗の担当者にも話を聞きました。この店舗では、備蓄米や米国産カルローズ米の扱いはありません。
備蓄米流通後の変化
「我々の店舗では備蓄米自体の扱いはないんですが、備蓄米の流通以降ブランド米は多少仕入れできる量が増えましたね。（米騒動の起こった）昨年来の傾向で24年産のブランド米が秋には底を尽きそうだったのが、備蓄米の流通に伴ってその心配がなくなり、むしろダブつきそうになってきたと卸業者が判断したんじゃないかと思います」
ブランド米価格の現状と予測
この担当者によると、備蓄米放出に伴い、ブランド米の米価は100円ほど値下がりしたとのことです。
「値段こそ高いままですが、備蓄米放出に伴って100円くらいは値下がりしました。今後の価格は本部からの通達次第にはなりますが、これ以上高くなるとは思えないです。ガクッと安くなるかは微妙ですが、秋までに多少なりとも値下がりはするんじゃないでしょうか」
豊富な品揃えと価格帯
住宅街の中にあるこの店舗は、備蓄米などの取り扱いがないにも関わらず、他のスーパーに比べて圧倒的にブランド米の品揃えが豊富でした。5キロで税込4000円台中盤から5000円台中盤の米価で、「コシヒカリ」や「ゆめぴりか」といった主要なブランド米が、産地が異なるものを含めると合計18種類ほど販売されています。取材当日の最安値は「新潟産 コシヒカリ」4190円（税込4525円）、最高値は「山形県産 つや姫」5190円（税込5605円）でした。
まとめ：備蓄米放出がもたらす市場の複雑な変化
小泉進次郎農水相による古い年度産備蓄米（古古米、古古古米）の放出は、低価格とメディア露出により一部の消費者から強い支持を得て、驚異的な売れ行きを見せています。これは、高い米価に苦しむ消費者にとって一定のメリットを提供していると言えます。しかし、先に放出された、古古米より価格が高い備蓄米は、24年度産ブランド米との米価差が小さいため、市場で苦戦しています。
いっぽう、備蓄米の流通が、一時品薄が懸念されていた24年度産ブランド米の供給不安を和らげ、卸業者の間ではダブつきを懸念する声も出始めています。ブランド米の米価は依然として高止まりしていますが、今後は大きく上昇する可能性は低く、秋の収穫シーズンにかけて緩やかな値下がりの兆候も見られます。備蓄米放出という異例の措置は、米市場に複雑な影響をもたらしており、今後の動向が注目されます。
引用元
Yahoo!ニュース / Shueisha Online
