中古車業界に迫る暗雲:倒産件数過去最多ペース、納車トラブルも頻発

中古車購入でトラブルが増えている。代金を支払ったにもかかわらず、約束通りに車両が納車されないという事例が頻繁に報告されており、消費者の間では「中古車購入は本当に大丈夫なのか?」という不安感が募っている。このような状況下、信用調査会社の最新データは、中古車販売業の倒産件数が過去最多ペースで増加していることを示している。この業界で一体何が起きているのか、元中古車雑誌編集長の筆者が解説する。

“業界の闇”は晴れるか?ビッグモーター事件とその後の波紋

中古車業界の“闇”が世間の注目を浴びたのは、ビッグモーターによる不正請求事件が記憶に新しい。「氷山の一角」ともささやかれ、業界全体の襟直しが期待されたが、残念ながら消費者を欺くトラブルは簡単にはなくならない。最近も、代金受領後の納車拒否や連絡不通といった悪質事例が報じられ、業界への不信感は根強いままだ。

中古車販売店の屋外に並べられた車両。業界の経営状況悪化を示す光景。中古車販売店の屋外に並べられた車両。業界の経営状況悪化を示す光景。

帝国データバンク調査:倒産件数が過去最多ペースに

実際、中古車販売ビジネスの経営環境は厳しさを増している。帝国データバンクの発表によると、2025年1月から5月までの間に倒産した中古車販売関連業者は50件に上った。これは、同期間の件数としては2012年以来13年ぶりの高水準で、前年同期(32件)と比較すると約1.5倍の増加となっている。このペースで推移すれば、年間での倒産件数は過去最多を更新する可能性が高い。もはや儲からないビジネスになっている現状を示すデータと言えるだろう。

帝国データバンク発表の中古車販売業倒産件数の推移グラフ。過去最多ペースで推移。帝国データバンク発表の中古車販売業倒産件数の推移グラフ。過去最多ペースで推移。

経営悪化が不正の温床に?

倒産件数の急増が示唆するのは、中古車販売ビジネスが構造的に「儲かりにくい」状況に陥っていることだ。市場競争の激化や、仕入れ価格の高騰、若年層の車離れなど、収益を圧迫する要因は多い。このような厳しい経営環境下では、正規の手法では利益を確保しづらくなり、不正な手段に手を出してしまう事業者が生まれる土壌となり得る。ビッグモーター事件の根底にも、このような構造的な問題があった可能性が指摘されている。

まとめ:厳しさ増す業界と消費者保護

中古車販売業界は、倒産件数の過去最多ペースでの増加や、納車トラブルの頻発といった深刻な問題に直面している。これは、一部の悪質業者の問題に留まらず、業界全体の経営状況の悪化と、それが引き起こす倫理的な課題を示している。今後、業界の淘汰や再編が進むと予想される中で、消費者が安心して中古車を購入できる環境をどう整備していくかが喫緊の課題となっている。

参照元

  • 帝国データバンク 発表データ
  • 弁護士ドットコムニュース (Yahoo!ニュース掲載記事)