生活保護は憲法で保障された生存権の「最後のセーフティネット」と位置付けられる一方、不正受給や自己責任論などから批判の対象となることも少なくない。こうした背景からか、生活保護を受給している多くの人々が「後ろめたさ」や「恥ずかしさ」といった感情を抱えているのが実情だ。生活困窮者向けサービスを提供するアーラリンク株式会社が、同社の「誰でもスマホ」利用者で生活保護受給者を対象に実施した意識調査では、その内情が明らかになった。
生活保護受給に「後ろめたさ」や「恥ずかしさ」
調査結果によると、生活保護を受給することについて最も多かったのは「後ろめたいが仕方ない」と感じる人で、全体の60.7%を占めた。「恥ずかしい」と回答した人も12.1%おり、これらを合わせると約7割に達する。一方で、「当然の権利」と捉えている人は21.4%にとどまった。この結果は、制度利用に対する社会的な偏見や自己否定感が根強く存在することを示唆している。
生活保護制度と生活困窮者のイメージ
経済的な困窮が奪うもの
経済的な厳しさゆえに、日々の生活で様々なことを諦めざるを得ない状況も浮かび上がった。「十分な食事をとる」ことを諦めた経験がある人は67.2%に上る。これは、大量の食品ロスが社会問題化する一方で、空腹を満たせない人々がいるという日本の貧困の実態を浮き彫りにしている。さらに、現代社会で必須となりつつある「携帯電話・スマホの契約・維持」を諦めた人も46.9%と、約半数に迫る割合だった。
生活保護受給に対する意識調査グラフ:「後ろめたい」「恥ずかしい」「権利」の割合
バッシングと孤立の中で
自由回答からは、「不正受給者のせいで肩身の狭い思いをしている」といった、世間の厳しい目に苦しむ声が多数寄せられた。このような「生活保護バッシング」の風潮の中、自分が生活保護を受けていることを「友人に話している」人は41.5%、「家族に話している」人も41.5%と、いずれも半数以下にとどまった。「誰にも話していない」という人も26.4%いる。
経済的困窮で諦めたことの調査グラフ:「十分な食事」「スマホ契約維持」などの割合
加えて、回答者の9割以上が「本当に困っても助けてくれる制度や人がいないと感じたことがある」と答えており、経済的な困難だけでなく、社会的な孤立という二重の苦しみに直面している実態が明らかになった。
制度の現状と課題
今回の調査からは、生活保護制度がセーフティネットとして機能する一方で、受給者が社会的なスティグマや孤立に苦しんでいる現状が浮き彫りになった。「後ろめたさ」を感じながら生活する人々、経済的な理由で基本的なニーズ(食事、通信手段)すら満たせない人々、そして困窮の中で孤立を深める人々。これらの現実は、生活保護制度を取り巻く社会全体の意識や、真に支援が必要な人々へのアクセス改善の必要性を改めて問いかけている。