石破総裁の進退を巡る激論:「党内論理vs国民世論」の溝と「不可解な日本政治」

自民党の石破茂総裁の進退を巡る議論が熱を帯びる中、政治ジャーナリストの田崎史郎氏とTBS系情報番組「ひるおび」のコメンテーター陣との間で激しい応酬が繰り広げられている。内閣支持率が急上昇している一方で、自民党内では「石破おろし」が依然として燻り続けており、この「党内の論理」と「世間の見方」との乖離が大きな焦点となっている。

自民党の両院議員総会が開催された2025年9月2日の「ひるおび」放送回でも、この問題が深く掘り下げられた。司会の恵俊彰さんが、世論調査での内閣支持率急上昇と党内の「石破おろし」の継続に触れ、「党内の考え方と世の中の見方とが、ちょっとズレてきている」と指摘すると、田崎氏は「世論調査で議席配分が決まるわけじゃない」と、世論調査の重要性を軽視するような発言を繰り返した。この発言は、国民の声をどう捉えるかという、日本の政治における根源的な問題を浮き彫りにしている。

「民主主義の基本は選挙」対「報道機関の役割」の対立

自由民主党本部。党内での石破茂総裁の進退を巡る議論が白熱する中、日本の政治の中枢が写し出されている。自由民主党本部。党内での石破茂総裁の進退を巡る議論が白熱する中、日本の政治の中枢が写し出されている。

田崎氏の世論調査軽視とも取れる発言に対し、火曜コメンテーターを務めるジャーナリストの大谷昭宏氏は強く反論した。「選挙は皆、思惑があると思うんですよ。でも、世論調査ってフラットで答えているじゃないですか」と、世論調査の客観性と重要性を強調。しかし、田崎氏は「民主主義の基本は選挙でしょ。選挙でもって議席配分が決まるわけでしょ」と、あくまで選挙結果こそが政治の根幹であるとの持論を展開し、世論調査の結果を無視してもよいという姿勢を崩さなかった。

これに対し、大谷氏は「じゃあ、何のために報道機関はああやって世論調査をしてるんですか。報道機関出身のわれわれが(世論調査を)否定してどうするんですか」と、読売新聞出身の自らの経験を基に、時事通信出身の田崎氏に対し、報道機関の役割を問い詰めた。この議論は、世論調査が単なる数字ではなく、国民の意思を反映する重要な指標であるという認識と、それを軽視する政治的論理との間の溝を明確に示した。

党内論理と国民感情の溝:過去の教訓が示すもの

田崎氏は先週8月26日の放送でも、お笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービー氏とも同様の議論を交わしていた。「党内世論と国民世論に乖離があって当然」とする田崎氏に対し、バービー氏は「総裁選で選ばれた人が新しい総理になったりするわけじゃないですか。それを、党内の論理で国民を振り回さないでほしいというのが一番の気持ち」と、国民目線での切実な思いを語った。

田崎氏は日本の議院内閣制を説明し、「自民党議員が総裁を選んで、その人が総理になれるかどうかとなるわけですね」と、第一党の議員が総理を決めるのは当然のプロセスであると解説。しかし、バービー氏は「(世論と乖離してても)総裁選前倒しをやってしまうと、わたしは自民党全体の印象が良くなくなります。『ああ、やっちゃうんだあ』みたいな感じになる」と、党内の都合で動くことによる国民の反発や自民党への不信感の増大を懸念し、納得しなかった。

三十数年前、高い内閣支持率を維持しながらも、自民党内で少数派閥であったために総辞職に追い込まれた首相がいた。故海部俊樹氏である。その際、海外メディアは「日本の政治は不可解」と報じた。現在の石破総裁もまた、同様の「不可解な日本の政治」の渦中に巻き込まれ、党内論理と国民世論の乖離の犠牲となってしまうのか。今後の日本の政治動向から目が離せない。

参考文献