トランプ支持層、イスラエル・イラン紛争への米国関与巡り分裂 – 保守派内で対立顕在化

【ワシントン=大内清】トランプ前米大統領が、イスラエルによるイラン攻撃への米軍参加の可能性を巡り、支持基盤内で賛否が割れている状況が顕著になっている。「米国を再び偉大に(MAGA)」を掲げ、保守派を結集させてきたトランプ氏だが、ここへきて支持勢力内の路線対立が表面化した形だ。この分裂は、今後のトランプ氏の外交政策、特に中東政策に影響を与える可能性がある。

保守派内の「米国第一」孤立主義の主張

中東への軍事関与が米国の国力低下を招くとの懸念は、トランプ氏の主要な支持者層の一部に深く根付いている。米FOXテレビの元司会者で、現在もトランプ支持者から絶大な人気を誇るタッカー・カールソン氏は、保守系ネット番組に出演した際に、トランプ政権がイスラエルとイランの戦争に深入りすれば、再び中東情勢の泥沼に足を取られることになると強く警告した。これは、「米国第一」を掲げる上で、他国の紛争とは距離を置くべきだという孤立主義的な主張に基づいている。

米国第一主義を訴える保守派コメンテーター米国第一主義を訴える保守派コメンテーター

第1次トランプ政権で首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏もこの意見に賛同しており、同様の声は議会共和党内のトランプ派急先鋒であるマージョリー・テイラー・グリーン下院議員らからも上がっている。彼らは、ロシアによる侵略を受けるウクライナへの支援に否定的な一派とも重なることが多く、広範な対外不干渉主義の傾向を示している。

強硬なイスラエル支持を訴える福音派

一方、トランプ氏の重要な支持基盤の一つである保守的なキリスト教福音派には、イランへの軍事攻撃を強く後押しする意見が多い。彼らの間では、イスラエルと敵対するイランを、キリストの再臨を阻害する黙示録的な存在とみなす終末論的な信仰が背景にある。この宗教的な観点は、イスラエルへの揺るぎない支持へと繋がり、結果として対イラン強硬論を推進している。

福音派のハッカビー氏、イスラエル支持を強調福音派のハッカビー氏、イスラエル支持を強調

ハッカビー氏からの圧力とトルーマンとの比較

トランプ氏は2024年4月17日、自身の交流サイト(SNS)に、福音派の牧師であり、かつて駐イスラエル米大使を務めたマイク・ハッカビー氏から個人的に受け取ったというメッセージを公開した。そのメッセージの中でハッカビー氏は、トランプ氏が現在置かれている状況を、第二次世界大戦末期に日本への原爆投下を決断した「1945年のトルーマン大統領以来」のものだと述べた。

ハッカビー氏は続けて、「私はただあなたを勇気づけるだけです」と結んでおり、これはイランに対して核攻撃を含む極めて強硬な措置を促しているとも解釈できる表現で、トランプ氏にイスラエル支援のための軍事関与強化を迫るものだった。このメッセージの公開は、トランプ氏が支持層内の強硬派からの圧力に晒されている現状を浮き彫りにしている。

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結論:トランプ氏の今後の選択

このように、トランプ氏の支持基盤内では、中東情勢への関与を最小限に抑えるべきだとする「米国第一」の孤立主義者と、宗教的信念からイスラエルへの強力な支援、ひいては対イラン強硬策を求める福音派の間で、明確な路線対立が生じている。この内部の分裂は、もしトランプ氏が再び大統領に就任した場合、彼の外交政策、特に中東における米国の立ち位置を決定する上で、大きな影響を与えることとなるだろう。トランプ氏がどちらの勢力の主張をより重視するのか、あるいは独自の道を模索するのかが注目される。

参考文献

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