内閣不信任案提出見送り 立憲への「弱腰」批判より問われる「第三極」の覚悟

通常国会閉幕が迫る中、野党第一党である立憲民主党が内閣不信任決議案の提出を見送ると表明しました。この決定に対し、立憲民主党には「政権交代を目指す姿勢に欠ける」「弱腰だ」といった批判が向けられています。しかし、今回の不信任案を巡る動きで、真にその立ち位置と覚悟が問われたのは、日本維新の会や国民民主党といったいわゆる「第三極」政党ではないでしょうか。政治ジャーナリストの尾中香尚里氏は、立ち位置を明確にしないまま都合よく立ち回る「第三極」の限界を指摘しています。

立憲民主党、内閣不信任案提出見送りの背景と批判

立憲民主党の野田佳彦代表は、6月19日に内閣不信任案の今国会での提出を見送る方針を正式に表明しました。見送りの理由としては、日米間の重要な関税交渉が最終段階にある中で政治的な空白を生じさせることの是非を考慮したためだと伝えられています。

長年、国会終盤における内閣不信任案の提出は、野党が政権への対決姿勢を示す象徴的な行動とされてきました。そのため、提出見送りの可能性が報じられるやいなや、立憲民主党に対して「政権交代を目指す迫力に乏しい」「与党に遠慮している」といった精神論的な批判や「弱腰」との指摘が噴出しました。野党第一党に対する不信任案提出を巡る議論は、ある種の「季節の風物詩」となり、批判の格好の材料となりがちです。

記者会見で内閣不信任案提出見送りを表明する立憲民主党の野田佳彦代表(国会にて)記者会見で内閣不信任案提出見送りを表明する立憲民主党の野田佳彦代表(国会にて)

問われる「第三極」政党の立ち位置

しかし、今回の内閣不信任案を巡る一連の「騒ぎ」を通じて、そのあり方が問われたのは、批判を浴びた立憲民主党や、仮に存在すると想定された石破政権ではなく、むしろ日本維新の会や国民民主党といった「第三極」と呼ばれる政党だったのではないかと指摘されています。

これらの政党は、昨秋の衆院選以降、石破政権が少数与党(※記事原文に準拠)となった状況を利用し、国会におけるキャスティングボートを握るかたちで与党と野党の間を巧みに遊泳してきました。

国会審議においては、石破政権(※記事原文に準拠)が単独で予算や重要法案を成立させることが難しい立場にあることを最大限に利用し、政権政党であれば到底採用できないような、ある意味で無責任とも取られかねない政策を突きつけて与党にのませようとする場面が見られました。また、選挙が近づくと突然自民党に敵対する姿勢を見せたり、野党第一党である立憲民主党との選挙協力を模索するなどして、議席獲得における利を得ようとする動きも指摘されています。

自らの政党としての明確な「立ち位置」を定めることなく、与党的立場と野党的立場を都合よく使い分けながら、責任については大政党に押し付ける。このような振る舞いがいつまでも許容されるわけではありません。

不信任案問題を機に問われる「覚悟」

内閣不信任案の提出問題は、あたかもいつまでも「モラトリアム」の状態にあるかのような日本維新の会や国民民主党に対し、「いい加減、リスクを負ってでも自らの立場を明確にせよ」と改めて突きつける問いとなった意味合いを持つと考えられます。

野党が内閣不信任案を提出するか否かは、政権への究極的な不信任を問う重要な局面です。この局面でどちらの側に立つのか、あるいは明確な態度を示さないのかは、政党のアイデンティティと覚悟を示すものとなります。「第三極」がキャスティングボートを握る力を発揮するためには、その影響力を行使する際の責任と、明確な政治的スタンスが不可欠です。不信任案を巡る議論は、そうした「覚悟」の有無を浮き彫りにしたと言えるでしょう。

(出典: ジャーナリスト 尾中香尚里氏によるJBpress記事に基づく)