中国裁判所職員、60億円着服疑惑と日本逃亡…本人名乗る人物がXで否定、深まる謎

中国・北京市にある地方裁判所の職員が、巨額の差し押さえ金を着服し日本へ逃亡したとする疑惑が持ち上がっています。その額は3億元(約60億円)に上ると報じられています。しかしその後、この職員を名乗る人物がSNS上で疑惑を否定し、新たな主張を展開したことで事態は混迷を深めています。中国国内での関連報道は規制され、当局は沈黙を続けており、真相は依然として不明です。

北京市で翻る中国国旗北京市で翻る中国国旗

巨額着服疑惑と日本への出国詳細

疑惑の中心にいるのは、北京市第3中級人民法院に勤務していた30代の男性職員です。報道によると、彼は裁判所が詐欺事件に関連して差し押さえていた多額の資金について、管理体制の隙を突いて自身の個人口座に不正に移し、着服したとされています。

この職員は5月の大型連休が始まる前に、家族と共に日本へ出国しました。出国に際しては、事前にギリシャ国籍を取得するなど、周到な海外逃亡の準備を進めていたと伝えられています。この問題は、6月上旬に中国の経済メディアである「財新」によって初めて報じられました。しかし、この報道記事は間もなく削除されましたが、香港や台湾のメディアがその内容を引用する形で広く拡散されることとなりました。

Xに投稿された「本人」による着服否定声明

事態は6月17日に予期せぬ展開を見せました。この職員を名乗る人物が、突如としてX(旧ツイッター)上に声明を投稿し、「資金を海外に持ち出してなどいない」と巨額着服疑惑を真っ向から否定したのです。

その声明によると、彼は裁判所の幹部から指示を受け、汚職事件に関連して被告側が納付した約7000万元(約14億円)の賠償金を、別名義の資金に変えるという不正操作に関与させられたと主張しています。当時、彼はこうした規則違反の行為に疑問を呈したものの、上司からは「余計なことは聞くな」「悪いようにはしない」と強く言われたといいます。やがて、自分が「スケープゴート(生け贄)」にされるかもしれないという強い身の危険を感じるようになり、4月に日本へ渡ったと経緯を説明しました。彼は声明の中で、「私の手元に巨額の資金があるならば、どうして出国後の生活費を友人に頼らなければならないのか」と述べ、着服の疑いを強く否定しています。現在の滞在場所については明らかにしていないものの、自らの潔白を証明するための証拠を公表する準備があるとしています。

深まる謎と中国司法の「闇」

この人物は毎日新聞の取材に対し、「身の安全が確保されてから、そちらと連絡を取りたい」と回答したと報じられています。さらに、Xへの19日の投稿では、国際援助組織の支援を受けながら、ある民主主義国家に法的保護を求めているという近況を明らかにしました。

現在のところ、巨額着服疑惑とそれに対する本人の否定声明という、互いに矛盾する情報が交錯しており、事件の真相は依然として明らかになっていません。しかし、この一連の出来事は、汚職問題が根深く、透明性が欠如しているとされる中国の司法機関における構造的な「闇」を浮き彫りにするスキャンダルであると言えるでしょう。中国当局の沈黙は、こうした不信感を一層深めるものとなっています。

参考文献: